お知らせ

大槌「秋の風コンサートin三陸花ホテルはまぎく」

2014.11.23

800_0891岩手沿岸部を巡る最後の公演となりました。岩手県上閉伊郡大槌町の浪板海岸にある三陸花ホテルはまぎく(旧浪板観光ホテル)は、国道沿いにあり、眼下に太平洋を見下ろす立地です。震災では津波の直撃を受け、3階までは鉄骨だけになったのだそうです。改修後、名前を変えて再開しました。ロビーには”大槌に音楽ホールを! 槌音プロジェクト”からグランドピアノが寄贈され、この春から月に一度程度、様々なジャンルのコンサートが開催されています。とはいえ、今年(2014年)の夏にピアノが置かれてから、使われるのはなんと今回が初めてだったそうで、実質的なお披露目コンサートとなりました。演奏は、釜石・宮古に引き続き仙台フィルチェロ奏者の山本純さん、ヴァイオリンの浅野みけらさん、ピアノの藤井朋美さんです。

800_0911親子連れやご夫婦、お一人の方、また昨年の復興コンサートでお世話になった教育委員会生涯学習課の方も駆けつけてくださったりと、町の方たちと宿泊客のみなさんとにお集まりいただき、コン800_2459サートが始まりました。エルシステマジャパンのプロジェクトが大槌でも始まっており、そこでヴァイオリンを始めたばかりという子供たちも来てくれました。クラシックやピアソラの曲、また童謡「夕やけ小やけ」を一緒に歌ったり、それぞれの楽器のソロからアンサンブルまで、様々に楽しんでいただきました。また演奏の合間にはチェロの山本さんが、オーケストラでの演奏活動や、これまでの復興コンサートの活動の中で出会ったり感じられたりしたエピソードが多くはなされ、県外からのお客様も多かったこともあって、頷きながら聞いていらっしゃる方も多く見受けられました。

800_0912800_2442最後はここでもメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲から1楽章を。1列目の浴衣姿の男の子も集中して聴いています。従業員の方も、お仕事の合間だとは思うのですが、聞こえてくる心地よい音楽に足を留めてくださったりと、なんだかそんな光景も嬉しく思いました。途中で、お酒のいい匂いを振りまいていらした浴衣姿のおじいさん達にも「少し、聴いて行かれませんか?」とお誘いしたり、地下での会合にいらしていた町長も、しばらく椅子に座って聴いてくださったり…町の風景だけを見ていると、大槌町の目指す復興が、どの程度進んでいるのか、またいないのか、たった一日の滞在の私たちには到底図り切れないと感じたのですが、その中にあってこの場所がひとときでも音楽を楽しむことのできる、地元のみなさんの“場所”になっていることを、目の当たりにして感じました。コンサートが終わると山本さんが最前列に座っていた子供さんと親御さんに「チェロ、弾いてみる?」と話しかけます。ヴァイオリンを弾いている子もいない子も、最初は恐る恐るだったのが、段々と夢中になっていって気付くと順番待ち。大人の方も挑戦していました。

800_2398槌音プロジェクト代表の臺さんからも、色々なお話を伺いました。「(仮設住宅にこちらから行くのではなく、)こ800_2547こ、花ホテルでコンサートをやる、ということが大事だと思っているんです。普段、仮設住宅に暮らしているお母さん達も、ここでコンサートがある、となると、紅を差して、ちょっとよそゆきを着て、誘い合ってきてくれる。ちょっとお出かけしてこようか、となる。そういう場所が今の大槌にはほとんどなくなってしまった。なので、機会を作って仮設の中からお母さんたちを引っ張り出して来たいと思っているんです。それから県外からいらっしゃる宿泊客にも、大槌に行ったら、あそこでこんな素晴らしい演奏が聴けたんだよ、遠くから演奏に来ている人たちがいたよ、と、外で話してほしい。(大槌、頑張ってるな、と。あそこに行ったらいい音楽に出会えたんだよ、と。)」というようなお話もありました。お話を伺いながら、子供たちのために、また(ご自身を含め)音楽と大槌を愛する多くの人たちのために、ご縁を大切に様々な活動をされている臺さんに、本当に頭が上がらない思いです。かさ上げの始まった大槌の旧中心部にひとの暮らしが戻るまで、また復興センターも音楽会を届けに通い続けたいと思いました。

800_2553花ホテル2そして今回、移動を含め4日間3公演をご一緒したVc.山本純さん、Vn.浅野みけらさん、Pf.藤井朋美さん。ありがとうございました!