お知らせ

田子西「秋の芸術劇場2017」へ

2017.10.7

毎月「うたカフェ」をお届けしている仙台市田子西市営住宅へ、今日は復興コンサートをお届けに行きました。名付けて「秋の芸術劇場2017」です。芸術の秋、本格クラシック音楽をたっぷりと愉しんでいただきましょう。あいにくの雨でしたが、会場はほぼ満席の賑わいとなりました。この住宅にお住まいの方のほか、お隣りの復興公営住宅や防災集団移転地域の人たちも集まってくださいました。
こちらの住民とおぼしき方が「この集会所に初めて入ったわ~」と感慨深そうにしていたり、他の町内会から来た人は「よその復興公営住宅の集会所なんてなかなか来られないからね、新鮮!」と珍しそうにしていました。人びとの集う新たなきっかけとして音楽がお役に立てたことがわかり、嬉しく思いました。
今日の出演は仙台フィルハーモニー管弦楽団のヴァイオリニスト小池まどかさんと、ピアニスト髙橋麻子さんのデュオです。
聞きなじみのあるエルガーやクライスラーの小品に続き、モーツァルト『ピアノとヴァイオリンのためのソナタ』やベートーヴェン『ヴァイオリンソナタ第5番』が演奏されました。演奏家の息づかいと緩急自在の目くるめくような指づかいが目の前で見えます。小池さんの足元や髙橋さんの背中は踊るように動き、全身を使って演奏していることがわかります。木でできた高さのある天井は楽器の音をよく響かせるので、みなさんは全身で音楽を味わうことができたのではないかと思います。演奏が終わるたびに「はぁ~」とため息が聞こえてきました。
山田耕筰の名曲『この道』『からたちの花』ではそっと口ずさむ人があちこちにいらして、やさしい柔らかな時間がふと流れたように感じました。目を閉じしみじみと噛みしめる人、遠い目をして何かを思い出しているような人の姿がありました。
終演後は「ありがとうございました~」「よかったねえ」とみなさん笑顔で帰って行きました。その様子に演奏家も町内会長さんも嬉しそうでした。お話しする中で、会長さんの奥さんが演奏家お二人と大学が同じということがわかり、「私がいた頃はね、パイプオルガンが初めて入った時でね…」「え!そうなんですか」と学校の歴史の話題で盛り上がりました。復興コンサート活動を通していろいろなご縁がつながるものですね。
ふと、「何か賑やかなイベントがあると家に帰ってからかえって淋しくなっちゃうことがあるんだけど、音楽は独りでいるときでも心の中で歌ったりできるからいいのよね」と、奥さんは語りました。「寄り添う」という言葉はどこか陳腐かもしれませんが、でも本当に音楽にはそういうことができるんだなあと改めて思いました。