お知らせ

荒井東「音楽サロン」_3月

2024.3.19

仙台市若林区にある復興公営住宅の荒井東市営住宅町内会からの依頼で
2018年4月から音楽を楽しむ会をお届けしています。
(仙台市音楽の力による震災復興支援事業)

昨日は小雪舞う寒い日でしたが、今日は穏やかな陽気でホッとしました。会場準備を進めていると、子供たちが興味津々で覗いてきました。「学校はお休みなの?」と訊くと「卒業式なの!」と元気な答えが返ってきました。音楽リーダーのソプラノ鈴木真衣さんとピアノ田村聡子さんは「可愛いね~」と、ひとしきりおしゃべりしていました。
前回初めて参加したYさんは本日一番乗りでやってきて「この会は毎月やるの?」と問うので、「はい」と答えると「…それはすばらしいねえ!」と明るい笑顔を見せました。

今日は小学生のSちゃんが飛び入り参加です。ゆっくりと体をほぐしてから、発声練習をしました。大きな円をイメージして「なぁ~あ~」と繰り返し、低い音から高い音への移行がスムーズにできるよう喉を温めます。また、早口で「まもまもまー」と反復するワークは唇まわりの筋肉がもつれるようでしたが、「ままままま」「ももももも」「まもまもま」と段階を踏んでやることで、ちょっと滑らかになってきたようでした。

数か月にわたって練習してきた瀧廉太郎『花』を今日は仕上げる予定でしたが、せっかくなので桜が咲くまで頑張ろうということにして、最終回は来月へ持ち越しました。「みなさんの声はそれぞれですが、一点に集中させようと思って歌ってくださいね」とアドバイスがありました。「合唱」というからには「合わせる」ことが大前提ですからね。集会所から見える広場には、この復興公営住宅の完成を記念して植樹された桜の若木が何本かあります。4月が楽しみですね。
その一方で、秋へ向けて『赤とんぼ』の練習を始めることにしました。皆さんおなじみの童謡ですが、二部合唱で歌った経験はないとのことなので、気持ち新たに取り組めることでしょう。冒頭の「小焼けの」「け」の音が高くて歌いづらい様子があったので、喉を締めずに胸を開くため、背中を少しだけ後ろに倒して発声する練習をしました。ちょっと怖がるみなさんに「椅子も背もたれがあるから大丈夫ですよー!」と真衣さんは檄を飛ばしていました。
Sちゃんは『花』も『赤とんぼ』も「歌ったことはないけど、聞いたことはある」と言っていました。歌詞に「おわれてみたのはいつの日か」とあるのを「どんなイメージがする?」と訊くと「トンボに追っかけられてる!」と言いました。「追われて」ではなく「負われて(=おんぶされて)」だと真衣さんが説明すると、むしろ大人の参加者が「あ、そうなんだ!」とおどろいていました。

後半のミニコンサートは卒業の季節にふさわしくイルカの『なごり雪』から始まりました。ソプラノの真衣さんですが、フォークソングふうに落ち着いた地声で歌い、聡子さんがハーモニーをつけて歌いました。参加者にとっては青春ソングの一つだったろうと思われます。せつなく、ほの明るく、ほろ苦いこの歌を、ほんのちょっと体を揺らしながら、しみじみと聴き入っていました。
一転、聡子さんはピアノソロで笠置シヅ子『東京ブギウギ』を軽やかに、また力強い朗らかさをもって演奏しました。あたりがぱーっと明るくなるような景気の良い曲で、気持ちが晴れるようです。みなさんは体を左に右に揺らしてノリノリでした。
アンコールは山口淑子『夜来香』です。人気の朝ドラでちょうど登場したとのことで、演奏家のお二人が新たに用意した曲でした。参加者のみなさんも「朝ドラは見てるよ!」とお好きらしく、ほくほくした様子。『なごり雪』とはまた別のタイプのせつない恋が甘やかな調べと歌声にのせて語られ、みなさんはうっとりと聴いていました。
大きな拍手とともに、今日の音楽サロンはお開きとなりました。Sちゃんは「来れるときあったら、また来るね!」と元気に帰って行きました。唱歌をはじめ、子供たちに手渡したい美しい歌がたくさんあります。機会があったら、また来てね。