仙台市宮城野区にある復興公営住宅の田子西市営住宅では、
町内会主催のサークル活動として、当住宅とその周辺にお住まいの方々の交流の場、
「うたカフェ」を2014年10月から始めました。
昔なつかしい歌声喫茶にヒントを得て、
みんなで歌い、おいしいコーヒーとおしゃべりを楽しもうという趣向です。
復興センターでは仙台オペラ協会と協働し、
音楽リーダーとなる音楽家をコーディネートしています。

本日は晴天なり。日当たりの良い集会所の中にいると汗ばむほどの陽気です。今月のうたカフェには16名の参加がありました。初めていらっしゃる方もちらほら、「歌が下手なんだけど、いいですか…？」と恐縮している方もいれば、「これカラオケ会なの？短歌を詠む会？」と興味を持ってのぞきに来た方もいました。参加動機は人それぞれ、歌ってみたいという気持ちさえあればどなたでも大歓迎です。
仙台オペラ協会のソプラノ松本康子さんと岩瀬りゅう子さん、ピアニスト可沼美沙さんが、音楽リーダーを務めます。
まずは松本さんから「先月は星にちなんだ選曲だったので、今月は“月”にしました」との説明があり、「でーたーでーたつーきーがー」でおなじみの『月』や『月の砂漠』などをみんなで歌いました。月の砂漠の歌詞を読んだ後に「ラクダに乗ったことのある人はいますか？」と岩瀬さんが質問すると、或る参加者から「はい、けっこう臭かったです」との答えがあり、「あらぁ、歌のイメージが崩れちゃうわね」と笑いが起きました。
続いて、映画『ティファニーで朝食を』で有名な『ムーンリバー』を歌いました。なんと英語に挑戦です。「カタカナ英語ですけど、一緒にやってみましょう」と少しずつ細かく分けて練習しました。
英語にみんなついて来るかな…と心配したのですが、けっこうまんざらでもない様子。「英語の授業を思い出したわ～」「英語なんて中学生ぶりじゃないの？」「あの映画、良かったわねえ」「ヘップバーンがきれいだったねえ」「ローマの休日だっけ？」「え？」とこの歌をきっかけにいろんな会話が飛び交いました。「英語なんて無理！」と決めつけずに、やってみるもんですねえ。
喫茶ひこのマスター西垣さんが用意してくださるおいしいコーヒーをみなさんが味わう傍らで、松本さんと岩瀬さんがデュエットで『ムーンリバー』をあらためて披露しました。二人のハーモニーがとても豊かで、みなさんうっとりと聴き入っていました。青春時代を思い出しているのでしょうか。
さらに本日のスペシャル、可沼さんがベートーヴェンのピアノソナタ『月光』の第一楽章を演奏しました。この至近距離でプロフェッショナルの演奏家の「本気」を体感できる贅沢なひととき。みなさんまばたきするのも惜しい様子で聴いていました。最後の一音が消えてゆくと「ほぅ…」とため息とともに大きな喝采が贈られました。
さて、ここでうたカフェが始まってちょうど1年経ちました。ここに来ると、意外な歌や新しい仲間との出会いがあります。その出会いが、参加者のみなさんの暮らしを豊かにしてくれることを願います。今後ともよろしくお願いいたします♫