お知らせ
六郷「冬のほのぼのコンサート」へ
- 2025.12.12
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今日は仙台市若林区にある復興公営住宅の六郷市営住宅に伺いました。出演はフルート櫻井希さんとチェロ佐々木杜洋さんです。
櫻井さんはこの市営住宅の隣にある六郷小学校の卒業生とのことで、故郷に錦を飾る機会となりました。佐々木さんもこの近くに住んでいたことがあるそうで、お二人ともにご縁のある六郷地区です。オープニングはディズニー映画「アラジン」の『A Whole New World』でした。フルートの温かな響きとチェロの豊かな響きが直接からだに伝わってきて、みなさんは生の演奏ならではの振動にハッ!としていました。
小さなワンルームの集会所で、楽器の音が程よく響きます。お二人が「演奏しやすい会場ですね」と言うと、集まったみなさんは「え、そうなんですか~」「へえ~」と、集会所の意外な一面を発見した様子。
プログラムは懐かしの映画音楽やポップス等を中心に構成されていました。あいだにバッハの名曲やクリスマスメドレーもあって、さまざまな音色を楽しめる、親しみやすいものでした。また、お二人がそれぞれの楽器の仕組みを説明する場面もあり、みなさん興味深そうにしていました。佐々木さんはバッハ『無伴奏チェロ組曲』について解説しました。「全部で36曲もあって、演奏すると2時間半もかかるんですけど、今日はその中から有名な作品をお届けします」と、第1番プレリュードを演奏しました。或る方は「おれ、チェロが好きなんだよね。小学校の時、音楽を聴かせてくれた先生がいてさ…」と思い出を語りました。「いまだにその先生の名前も覚えているよ」と感慨深い様子でした。
櫻井さんはこの秋、家族の転勤で仙台から福島県に引越したとのことで、「今朝は新幹線の車窓から、故郷のことを思い出していました」と言い、このあたりの田んぼでザリガニを取ったこと、マラソン大会が辛かったことなど、小学生時代の思い出を話しました。「ソーラン節は今でもやってますか?」と尋ねると、「うん、続いてるよ!」「うちの孫も踊ってる」と声があがりました。まるで親戚の家に来たような和やかさがありました。
本編最後の曲を演奏している最中に地震がありました。みなさんが持っていた携帯電話からけたたましくアラート音が鳴り響き、騒然とした雰囲気になりました。演奏を一時中断して、ドアを開け各所安全確認をしました。震源は青森沖あたりのようです。落ちついた頃を見計らって演奏を再開しようとしたところ、今度は津波警戒のサイレンが辺り一帯に鳴り出しました。スマホ情報によると、仙台ではなく南隣の名取市に津波注意報が出ていました。3.11を思い出させる状況に心臓がドキドキします。
演奏はこのまま中断か…と思ったところ、「一人で家に居るよりも、みんなで居るほうが安心だね」と誰かが言いました。
なるほどそうかと思い、みなさんのご意向をうかがうと「演奏を最後まで聴きたい」とのこと。地震も落ち着いた様子ですし、お二人は気を取り直して、アンコールに中島みゆき『糸』、美空ひばり『川の流れのように』を演奏しました。
息づかいが感じられる温かい音色が聴く人びとをやさしく包みます。ざわついた気持ちがすうっと鎮まるようで、今年一年のこと、そしてこの14年のことを振り返るひとときにもなっていたのではないでしょうか。終演後は、お客さんと演奏家のあいだで会話が弾んでいました。
「本当に心が洗われるようだったわ。どうもありがとう」
「俺ね、いま尺八を独学で練習しててね、美空ひばりを練習してるんだ」
など、いろいろなお声がありました。来場者の笑顔に演奏家のお二人もほっとした様子でした。みなさんどうぞよいお歳をお迎えくださいね。






