お知らせ

泉中央南「歌声サロン」_9月

2017.9.19

仙台市泉区の復興公営住宅で2015年10月から「歌声サロン」を始めました。
復興センターでは音楽家をコーディネートし、泉中央南町内会と
泉区まちづくり推進課と協働してこのサロンを運営しています。

台風一過の青空がまぶしい日です。参加者のみなさんは台風の置き土産の暑さにふうふう言いながらやってきました。音楽リーダーの声楽家・後藤優子さんとピアニスト田村聡子さんはこの青空に映えるレモンイエローの衣装ではつらつと登場しました。さあ今日も楽しく歌っていきましょう!
まずは入念なウォーミングアップから。軽いストレッチでからだをほぐした後に深呼吸をします。14カウントで息を吐き、4カウントで息を吸うことを数回繰り返すと、「うわぁ暑い暑い」「窓あけて~」と敏感な反応がありました。
歌う態勢が整ったところで、童謡『七つの子』の歌詞を朗読しました。よく知っている歌ですから何の気なしに歌えてしまいますが、この歌詞には七歳の時に母親を失った野口雨情の心情が反映されていることを解説すると、みなさんは「まあそうだったの~」と驚いていました。そう思うと、なんて哀しく、またなんて優しい歌であることでしょう。これまでとはまったくことなる情景が浮かんできました。みなさんの歌い方も子守唄のような優しさを帯びていました。
続いては、がらりと雰囲気を換えて千昌夫『星影のワルツ』を歌いました。後藤さんも田村さんもこの歌を知らなかったそうですが、参加者の多くは「ああよく歌ったよ」と嬉しそうです。恋人の別れを歌ったもの悲しい歌詞ですが、遠く離れても想っているというところが、震災で大切な人と遠くなってしまった人びとの気持ちを代弁しているようでもあります。ゆったりした三拍子に身を載せてみなさん情感たっぷりに歌っていました。
そろそろ冷たい飲み物でのどを潤しましょう。この一服する間はおばちゃんたちと演奏家の世間話タイムでもあります。せっかくなのでこういうときにリクエストや歌の好みをリサーチして、今後のプログラムに反映させたい、と田村さん。ありがとうございます!

締めのミニコンサートでは、まず映画『サウンド・オブ・ミュージック』のタイトル曲が披露されました。伸びやかな歌声にみなさんうっとりと魅了されていました。
窓から見える泉ヶ岳はスイスの山々に思えてきます。目の前の野原に主人公のマリアがギターを抱えて歌っていそうな気がするほどです。
「この映画、大好き!」「映画館で立ち見で観たよ」「何回も見たなあ」「うれしいわあ」と、目をキラキラさせて話す人が何人もいました。青春の一ページを飾る洋画だったんですね。
本日の最後を飾ったのは中島みゆき『糸』でした。それまでの賑やかさがふと静まって、多くの人がしんとして聴き入り始めました。目頭を押さえる姿もあちこちにありました。演奏家と参加者それぞれの糸が合わさって、そこには温かな目に見えない織物ができていたかもしれません。歌のパワーが聴く人たちを元気にし、聴く人たちのパワーで演奏家もまた勇気と力をもらっている、そんな循環を感じました。
終演後のお見送りでは「ありがと~!」と演奏家に抱きつく人もいました。参加してくださる方が元気な様子を見せてくださることが私たちの励みになります。今回で「歌声サロン」は丸2年を迎えました。来月から3年めに入ります。今後ともどうぞよろしくお願いします。