お知らせ

七ヶ浜町松ケ浜地区へ

2017.10.25

松島湾に突き出す半島のような七ヶ浜町。その根元にあたるところに松ケ浜地区は東日本大震災の津波で甚大な被害があった地域です。今では戸建ての災害公営住宅が建ち並び、地区の集会所である松ケ浜地区避難所では七ヶ浜町社会福祉協議会では定期サロンを開催し、地域住民の交流の場になっています。今日はその茶話会の「お茶っこ会」に復興コンサートをお届けしました。
出演はソプラノ齋藤翠さんと渡邉かれんさん、フルート山田みづほさん、ピアノ高塚美奈子さんの4名です。主催者の予想をはるかに上回る参加数があり会場は満員でした。「あら、珍しいこと」「今日は特別だから来たの」という会話が聞こえてきました。コンサートを楽しみに来てくださったんですね。ありがとうございます。

プログラムはそれぞれのソロ、デュオ、トリオなど編成を変えながら、日本の歌や洋楽ポップス、映画音楽、オペラ、そしてショパンもモーツァルトも網羅したバラエティ豊かな内容でした。演奏家の気さくなトークにしばしば笑い声や拍手が起こり、とても親密な雰囲気でコンサートは進行しました。
  会場は音の響きがとても良く、明るく澄んだ歌声、温かみのあるフルートの音、絢爛なるピアノの音が豊かなハーモニーとなってお客さんを包み込みました。皆さんはちょっと前のめりになって、音を全身で受けとめるようにぐいぐいとした勢いをもって聴いているように見えます。ハーモニーが聴く人のからだに水のようにしみわたってゆくように思われました。

ふと見ると、演奏に合わせて両手をひらひらさせて踊っているおばさまがいました。小さく口ずさんでいる人もいます。浜辺の人はノリがいいと言いますが、ここ松ケ浜の皆さんもそのようです。一緒に『青い山脈』を歌ったときはみなさんさらにイキイキとしてエネルギーがあふれんばかりでした。
 

終演後は演奏家もお茶っこ会に参加しました。「さあどうぞどうぞ」とみなさん持ち寄りの漬物やお茶菓子がどんどん回ってきます。「前に出て踊りたかったわ~」「こんど私も歌わせてよ」と冗談も飛び出して、とても賑やかです。

「津波で家ごと流されてこっちに来たけど知らない人ばかりでしょ、だから友だちつくらないとさ」「いっぱいレコードなったんだけど全部流されたわ」「こういうの仙台に行かないと聞けないでしょ、だから今日は嬉しかった」
会話の中にふと震災のことが顔を出します。「あれから6年だもんね、早いねえ」
宴もたけなわの中、閉会の時間となりました。「また来てね!」「待ってます!」と熱いラブコールがあり、演奏家も「はい、また来ます!」と嬉しそうでした。晩秋の肌寒い午後でしたが、松ケ浜のみなさんのおかげでぽかぽかと心温まるひとときをご一緒できました。