お知らせ

ふたたび川の上・大地の会へ

2018.2.7

石巻市小船越地区には津波の被害があった方々が多くお住まいで、今もプレハブの応急仮設住宅群があります。目の前の大規模な防災集団移転団地の整備は着々と進み、今年から段階的に移転が始まる様子です。
そんな状況を背景として地域交流の試みとして始まった「大地の会」は高齢者を対象にした健康づくりサークルで、地元大学や企業の協力を受けながら活動しています。30名程度の参加者が楽しみながら筋トレや脳トレなどに励んでいます。
今日は昨年11月に引き続き、みんなで歌う「うたごえ広場」をお届けしました。音楽リーダーは石巻市在住の声楽家・渡邉かれんさんと東松島市在住のピアニスト楠田由貴子さんです。
まずは表情筋の体操です。かれんさんは「みなさん、この言葉に応じた表情をしてみてくださ~い」とカードを提示しました。「嬉しい」「びっくり」「すっぱい」などいろいろな単語が書いてあります。参加者は面白がっておおげさにやってくださり、あちこちから笑いが起きました。「無表情」のカードにもどうしても笑ってしまうのですが、それはそれで良い運動になりましたね。
続いては、深い呼吸をするワークをしました。立ち方を確認し、ゆっくり鼻から息を吸って、カウントに合わせて口から一定の速さで息を吐き出します。15カウントまで試したところで、「どこまで行けるかやってみましょうか」とかれんさん。こういう競争ものは燃えますよね。なんと大地の会代表の桜井さんが45カウントまで頑張って、周りから盛んな拍手を受けていました。さすがハーモニカの名手、肺活量もすごいですね。
発声練習ではかれんさんの手の動きに合わせて声を出すワークをやりました。地を這うような低音から怪鳥のごとき高音まで、普段は出さないような自分の声にみなさん大笑いしていました。
さて、今日のうたの1曲目は『雪の降る街を』です。じつはショパンの曲によく似た部分があるとのことで、楠田さんがそのフレーズを演奏すると、参加者は「わ~そっくりだね~」と感心していました。
かれんさんは短調と長調の雰囲気を表現することや、同じ言葉の繰り返しはニュアンスを変えることなどをアドバイスしました。特に、長調の明るさで終わる最後の一音は「歌詞のとおりに微笑んで歌いましょう!」と言いました。最初にやった顔の体操がここでも活かされますね。

2曲目は『青い山脈』です。さっそく客席から「あら~なつかしいこと!」との声が聞こえてきました。朗らかなリズムに思わず体が弾んで、みなさん自然と右に左に揺れています。会場の空気がさらにぱっと明るくなったように感じました。今日の青空と相まってどの顔も晴れ晴れとした表情になっていました。
会の締めには演奏家によるミニコンサートをお楽しみいただきました。今の時季にぴったりの『早春賦』と、プッチーニのオペラアリア『私が街を歩けば』が披露され、客席からは「…はぁぁぁ」と大きなため息が聞こえてきました。寒い日の温泉のように「ああ、身に染みた~」というため息は皆さんの共感を呼んで、また笑いが沸きました。堪能していただけて何よりです。温泉浴や森林浴のように、「音楽浴」というのもできそうですね。
アンコールでお二人は「前回いただいたリクエストです」と、『アメイジング・グレイス』を演奏しました。その調べにゆったりと身を浸すようにして、みなさんじっと聴き入っていました。
大規模団地に人が住み始める今年からしばらくの間は、この地域にとって大きな転換点となるのかもしれません。暮らしよい穏やかで健やかな町になりますようにと心から願います。時には深呼吸して歌ってみてくださいね!