お知らせ

矢本東「あじさいコンサート」へ

2018.6.9

梅雨入り間近のこの日、どうにか青空が持ちこたえてくれました!「浦霞発、日本酒のチカラ」プロジェクト主催「あじさいコンサート」が、東松島市矢本東市民センターで開催されました。

塩釜と東松島・大塩に醸造蔵を持つ、日本酒「浦霞」醸造元の株式会社佐浦さんは、本社蔵が津波浸水したほか、土蔵外壁の崩落、約3万本のお酒の破損など、自らも大きな被害を受けながら「いただいたご支援を地域の復興へつなげていく」ことを誓い、2011年4月から塩釜市・東松島市への寄附や、仮設住宅集会所への備品寄贈、新設される保育園や公園への遊具の寄贈など、地域の復興を後押しする活動を現在も続けていらっしゃいます。ハード面がひと段落した昨年、「これからは被災された皆さんの“心の復興”の力になりたい」とご相談いただき、防災集団移転団地にできた集会所を会場に、音楽の力による復興センター・東北と一緒になって、復興コンサートとお酒のお振舞いとをセットにしたイベントを、初めて企画しました。今回は、昨年9月東松島市柳の目東集会所で開催して以来、2度目の開催です。今回も、日本酒がお好きな、またはお酒が似合う音楽家さんに出演いただけたら…と考えた結果、東松島市出身である声楽家・ソプラノの齋藤翠さん(仙台オペラ協会)、石巻にお住まいのソプラノ渡邉かれんさん(二期会)、フルートの山田みづほさん、ピアノの高塚美奈子さんにお願いすることになりました。

コンサートの会場の入口では、東松島市内で被災者の皆さんのコミュニティづくりのサポートにあたっている、ひとまちネットのスタッフさんが、プログラムの配布やお席の案内を担当。仮設住宅の頃から顔なじみの方も多くいらしたようで「あら~久しぶりですね!お元気でしたか?」「元気だったよ~!」と笑顔が交わされていました。これも、地元のことをよく知っていらっしゃるひとまちネットさんにお手伝いいただけたからこそ、の光景でした。後からお聞きすると、あおい地区に自立再建された方たちがお友達と一緒に来てくださっていたそうです。あおい地区は、自立再建の方、集合型災害公営住宅の方、戸建ての災害公営住宅の方と、広大な土地に様々な方が転入されていらっしゃった地域です。甚大な津波の被害を受け、同じ場所に家を建てることができなくなった大曲浜だけでなく、東松島市内の様々な沿岸部地域から転入されています。新たなお住まいは、ようやく慣れていらした頃でしょうか…一日も早く、新しい地域のお隣さんと、毎日の生活が安心しておくれますようにと、心から願うばかりです。

そしてコンサートが始まりました。齋藤翠さんをはじめ、アイディア豊富な皆さん、「お酒に似合う曲・お酒にまつわる曲」を、さまざまな角度から集めてくださいました。コンサートの始まりはオペラ「椿姫」より「乾杯の歌」を歌いつつ、客席から登場です。続いて齋藤翠さんが「踊り明かそう」、ロシア民謡「黒い瞳」を。つづく全員でのカンツォーネ「サンタルチア」は、間にフルートでの「黒田節」を挟む構成。客席の何人かのお客様が、口ずさんでいらっしゃるのが聞こえ、演奏者のみなさんも驚かれていました。この「黒田節」の間、お酒を注ぎつつ楽しんでいるソプラノのお二人の小芝居に、お客様のみなさんもくすくす。つづく「サンタルチア」日本語版…?よく聞けば、黒田節の歌詞を「サンタルチア」で歌っています。最後は、浦霞の小さな樽を高く掲げながら「♪いちた~る~(一樽)」「にたる~♪(二樽)」「さんた~るチ~ア~!♪」。思いがけないダジャレに、お客様も拍手喝采です。

続いては、みなさんに一緒に歌っていただくコーナー。準備から当日まで、特に広報活動でお力添えをいただいた東松島市役所建設課のKさん、Sさんからリクエストをいただき、3曲ある東松島市のイメージソングから「東松島賛歌」を準備しました。2010年、鳴瀬町と矢本町が合併し、東松島市が誕生して5周年の記念に作られたイメージソング。今回は「せっかくの素敵な歌詞をご紹介したい」との翠さんの提案で、3番までのフルコーラスで演奏しました。演奏が始まると客席からはたくさんの歌声が聴こえ、演奏されたみなさんもとても驚いていました。「こうした機会に多くの方にご紹介いただき、またプロのみなさんに演奏していただいて、とてもありがたい」と市役所スタッフの皆さんにも仰っていただき、素敵な歌との出会いに感謝を感じたところでした。

ピアノの高塚さんによるリスト「愛の夢」は、「お酒を飲んだときの、少しいい気分で微睡んでいるような雰囲気を味わっていただけたら」と選曲されたそう。本格的なクラシックの名曲の演奏に、みなさんすっかり聞き惚れました。フルートの山田みづほさんは「とある焼酎のテレビCMで使われていた曲です」とフォーレの「シチリアーノ」を。続けて「お酒を飲むと、眠くなりますよね?」とのお話しから「日本の子守唄メドレー」を。「五木の子守唄」「竹田の子守唄」などの懐かしい曲に、老人ホームから団体で来てくださった皆さんが、うんうん、と頷きながら聴いてくださっていたのが印象的でした。歌の渡邉かれんさんはお酒の楽しみを明るく歌ったロッシーニ作曲の「狂宴」と、プッチーニのオペラ「ジャンニ・スキッキ」よりアリア「私のお父さん」を。耳にする機会の多いこの名曲を生演奏で聴く迫力と、かれんさんの声量のある美しい声に、大きな拍手が送られました。

最後はヨハン・シュトラウス2世のオペレッタ「こうもり」から「乾杯の歌」を全員で。本来ならシャンパンを讃える内容なのですが、ここは、翠さんが「今朝閃いた!」とのことで、なんと浦霞の一升瓶が登場!歌詞も、シャンパンではなく、今日の特別バージョンで「浦霞」と替え歌を。素敵なドレス姿で一升瓶を持ちながら、楽しげに歌うオペラ歌手のお二人…目にすることは、そうそうあることではないかも…?大盛り上がりのフィナーレの後には、アンコールで「愛燦燦」を。会場のお客様もスタッフも、みんながしっとりと音楽に耳を傾けたひととき、そして50分のコンサートはあっという間に幕を閉じました。

演奏者が舞台から下がった後、(株)佐浦の冨谷企画課長がマイクを持って、お客さんの傍へ。「今日の演奏、いかがでしたか?」とみなさんにインタビューしてくださいました。「演奏はもちろんとっても素晴らしかったですし、素敵なドレス姿でわざわざおいでくださったのが、とっても素敵で嬉しかった!」「耳にも、目にも、美しかったねぇ」と、みなさん笑顔でお話しくださり、ほっといたしました。続いては、今日の振る舞い酒の説明です。宮城県限定の夏のお酒と、佐浦さんから発売されている、本格焼酎に漬けた梅酒の2種類を今日はお振舞いいただきました。もちろん、お車の方や飲めない方には、ジュースやお茶も。広い会場の中をひとまちネットさんがお手伝いくださって、それぞれの席でお友達とお話しをしながら、午後のお酒を楽しまれていました。

プログラミングを担当してくださった齋藤翠さんからは「お酒にまつわる曲目…と考えるのはとても楽しかったです!また機会がありましたら…」と言っていただきました。季節をテーマにしていただくことは度々ありますが、今回のような依頼はなかなかありません。また、同じテーマでも演奏家の楽器編成やレパートリーによっても、隠れた名曲に出会えるかもしれません。こちらもまたの機会がありますように、また、(株)佐浦さん、そして東松島市役所さん、ひとまちネットさんとも再びのご縁がありますようにと願ってやみません。お世話になったみなさま、本当にありがとうございました!