お知らせ

荒井東「うたごえサロン」_9月

2018.9.18

仙台市若林区にある復興公営住宅の町内会からの依頼で
2018年4月から「うたごえサロン」を荒井東市営住宅にお届けしています。
(仙台市音楽の力による震災復興支援事業)

金木犀の花の香り漂う季節となりました。今日は夏日の仙台ですが、この乾いた暑さはむしろ好ましく感じられます。会場で準備を始めると通りかかった人が「あら、早いこと!」「いつもご苦労様ね」と声を掛けてくださいます。一番乗りのおばさまは「先月休んじゃったから…」と待ちきれない様子でやって来て、「今日はどんな歌かしら?たのしみね」と笑顔を見せました。

今日は11名の参加がありました。音楽リーダーのメゾソプラノ後藤優子さんとピアノ田村聡子さんが登場するとやんやの拍手が。さあ、今日も愉快に歌っていきましょう!
準備体操と発声練習をして、まずは童謡の『かわいい魚屋さん』を歌いました。女性は弾むリズムに乗って首を左右にかしげながら歌う方が多いようです。演奏家がウッドブロックを差し出して「叩いてみませんか?」と勧めると、男性陣は「いやいやいや、○○さんやりなよ!」「オレ無理無理無理、◇◇さんこそやりなよ」と全力の譲り合いが始まりました。すると女性陣がすっと引き取って「やってみようかしら」と、歌に合わせてポコポコ叩き始めました。やはり女性の方がいざというときの勇気があるのでしょうか。

今日は海や魚にちなんだプログラムで、最後に宮城県の代表する民謡『斎太郎節』を歌いました。みなさん身に染みたご当地民謡です、手拍子や合いの手が自然に湧いてきて、声も朗々とし、会場全体にエネルギーが満ちたような雰囲気になりました。80歳以上とおぼしき方が「こうして大きな声を出せるのってほんとに気持ちがいい!ありがとう!」と演奏家に感謝していました。「ドラ声だけど、これが自分の声だからしかたないよね~」とゲラゲラ笑う様子に私たちスタッフも元気をいただきました。

また、休憩時間にある人が「後藤さんはオレの親戚に似てるんだよねえ」と胸ポケットから古いポラロイド写真を出して演奏家に見せていました。参加者がこんなふうに打ち解けた様子でいるのはいいなあと思いました。
コーヒータイムのミニコンサートで、さだまさし『秋桜』が演奏されました。すると、みなさんの表情がしゅっと引き締まって、とても集中して聴いていることが傍からもわかります。ご自分が嫁いだ日のこと、あるいは娘さんを嫁がせた日のことを思い出してか、涙をそっとぬぐう姿がありました。

 

今日一番乗りでやってきた方が、サロンが終わって帰るときに演奏家に御礼を言っていました。
「歌い方や声の表情がほんとうに豊かで、演奏を聴いていると一冊の詩集を読んだような気持ちになりましたよ」
なんてすてきなお褒めの言葉でしょう。月にたった一度のささやかな“非日常”が、みなさんの心に新鮮な息吹を吹き込めたらいいなと思います。また来月よろしくお願いします!