お知らせ

佐沼「秋のほのぼのお茶っこコンサート」へ

2018.10.10


宮城県北部の内陸にある登米市は渡り鳥の聖域である伊豆沼が有名です。震災後は隣接する南三陸町から多くの人々が避難してきました。仮設住宅での避難生活を過ごした後、故郷に戻ることなくそのままこの地に定住した人も多くいらっしゃいます。
この迫西大網第二住宅には集合型1棟24戸と戸建て22戸があり、一人暮らしの高齢者がほどんどだそうです。集合棟の1階には住民の交流の場としてコミュニティルームがあるのですが、トイレも空調設備もない等不便な点があり、有効利用されていないとの話を伺いました。また、沿岸部から移って来た人からするとこの辺りは地域の人間関係が希薄に感じられ、その様子を「田舎の都会だ」と評する方もいます。
今回、この住宅の班長さんから復興コンサートの依頼がありました。これまでイベントごとはやったことがないそうで、「人が集まるきっかけになればいいと思ってね」とのお話しでした。

本日の出演はクラシックギターの二重奏、佐藤正隆さんと小関佳宏さんです。会場には約30名の参加者が集まり、椅子が足りなくなってしまいました。班長さんは自らは床に座って、「こんなに人が来たの見たことないよ!」と嬉しい悲鳴を上げていました。
プログラムは美空ひばりや坂本冬美などの歌謡曲や懐かしの映画音楽、日本の唱歌、そして演奏家お二人の師匠にあたる仙台のギタリスト佐藤弘和さんの作品で構成されていました。
初めての演奏会ですこし緊張していたお客さんたちでしたが、正隆さんの軽妙なトークと小関さんのほのぼのした語り口にいつしか和んで、ときに笑いながら、ときにしみじみと、ときには目頭を押さえながら、ギターの調べに耳を傾けていました。至近距離なのでふたりの息づかいまでが手に取るように伝わってきます。お客さんも呼吸を合わせるかのようにして、余韻まで聴き取っていました。

お客さんはシャイな方が多くて、最前列に座ることをかたくなに遠慮する人が多数いたのを開演前に見ていた正隆さんは「じゃあ僕の方からみなさんのところに行きます!」と、椅子をぐいっと客席に近づけて『禁じられた遊び』を弾き始めました。まあ、なんと贅沢な光景でしょう。みなさん戸惑いつつも嬉しそうな様子でした。
終演後のお茶飲み会ではほとんどの方が参加してあれこれとおしゃべりしました。
「古賀政男もいいねえ」「宗右衛門町ブルースが思い出の歌なの」「荒城の月を聴きたいなあ」「この人、歌わせるとすごいんだから」
みなさんそれぞれに音楽にまつわる思い出をお持ちの様子です。演奏家は「わかりました、じゃあ次回ぜひ」と再登場を請け負っていました。最後は全員で記念写真を撮り、「ありがとうございました」「また来てね」「ほんとだよ」と熱いお言葉を頂戴しました。

後片付けをしながら、或る方が「ほんとにね、こういうことこれまでなかったから、今日はとってもたのしかったです」と、ぽそりと言いました。単なるリップサービスではない、実感のこもった言葉に胸打たれる思いがしました。はい、またお会いしましょう。
外に出て空を見上げると白鳥の一団が飛んで行くのが見えました。また冬が来ますね、みなさん風邪など引かないようにお過ごしくださいね。