お知らせ

気仙沼・リンデンバウムの杜「夏祭り」へ

2019.7.27

7月最後の週末、宮城は、数日前までの曇り空、霧雨つづきの天気が、全く信じられないかのような青空となりました。今日は、気仙沼・東新城にある、介護老人保険施設リンデンバウムの杜の「夏祭り」に、メゾソプラノの後藤優子さんと、ピアノ/シンセサイザーの菅野静香さんとお招きを受けました。介護老人保健施設と通所リハビリテーションに通うみなさん150名に、職員や利用者家族が加わり、総勢200名あまりの大規模な夏祭りです。中でも今年は、創立20周年とあって、いつもよりゲストも多く華やかに開催されることとなりました。後藤さん、菅野さんがリンデンバウムの杜に伺うのは二度目。3年前にお伺いした際には、後藤さんの素晴らしい歌唱力と、シンセサイザー一台とは思えない多彩なサウンドが大いに喜ばれ、ぜひ、またお二人に来ていただきたい、との熱烈なラブコールを受けての再訪となりました。

リンデンバウムの杜の夏祭りは、この会場を埋め尽くす大漁旗が印象的です。船が出港する日の、港の賑やかさ、華やかさや、来週末に迫った気仙沼港(みなと)まつりの楽しさなど、みなさんそれぞれのなつかしい思い出が、この大漁旗を目にすると、それぞれの脳裏に甦ってくるようでした。

朝のうちにリハーサルをしていると、早く会場に着いてしまったおじいさんが、後藤さんの歌う「故郷」を耳にして「…上手だなゃ…」と呟きながらティッシュで涙を拭っていらっしゃいました。まだ、お祭りは始まっていなかった、ウォーミングアップの時間でしたが、そんなおじいさんの様子に、音楽というのは本当にふとした瞬間に、人の心を捉えたり、心に沁み込んでいくものなのだなと感じました。

開会の挨拶に続いて、秋葉太鼓保存会と中才打ち囃子保存会による、太鼓と笛の演奏、そして、よさこいチーム“祭りや”によるよさこい、気仙沼のピアノの先生方で結成されたバンド”ラブソンガーズ”さんによるテンポの良い懐メロの数々に、歌のお好きな皆さんが手拍子で応えます。“ラブソンガーズ”さんは「年下の男の子」ではお揃いの振付けがあったり、歌いながらお客様と握手をしに会場の中へ中へと入っていったり…と、気仙沼のあちこちで活動していらっしゃるからこそ、どんなパフォーマンスが喜ばれるのかをよくご存知です。この日は、リンデンバウムを含めて3つの夏まつりに呼ばれていらっしゃるとのこと、大活躍のみなさんでした。

そして夏祭り最後のトリとして、後藤優子さん、菅野静香さんの登場です。シンセサイザーから繰り広げられる、豊かな音色やリズムで「高原列車は行く」から始まりました。年代的にピタリとはまった方も多かったようで、あちこちから手拍子と共に、一緒に歌ってくださるのが聞こえます。声は最後列にも充分に豊かに届き、聴いているみなさんも、心なしかやはり楽しそうです。また、せっかくプロのクラシックの声楽家にご出演いただく、ということで宮城に縁のある土井晩翠作詞「荒城の月」も加えていただきました。この曲も口ずさまれる方がたくさんいらっしゃいました。

後半は、再びお祭りらしく、懐かしく元気の出る歌を。後藤さんが、客席に向かって「次の曲は、きっとみなさんには馴染みのある曲ではないかと思います。…おいらの船は…?」と聞くと、どこからともなく「300トン!」と、即座に返してくださるノリの良いお客様!「なんだかテレビ番組での、司会者とのやりとりみたいですね!」とても嬉しそうでした。昔、気仙沼の結婚式では、最後の締めの曲として欠かせない一曲だったというこの曲。手拍子も歌声も「これはおらいの唄!」とでも言うように、みなさんノリノリです。職員のみなさんも、利用者さんと一緒になって盛り上げてくださいました。

たのしい時間はあっという間。アンコールをいただいて、後藤さんが選んだのは岡野貞一作曲の「故郷」。こちらもたくさんの方が口ずさんでくださっていました。気仙沼には、津波の後、浸水危険区域となり住めなくなってしまった地域も多くあり、この曲はまだ、耳にするのが辛い方も多いのでは、と思うこともあります。ですが、人生の長い旅路を辿っていらしたみなさんに、その旅路を振返る一曲として、喜んでいただけているなと実感する場面も多く、今回も正に、その後者の雰囲気を感じながら聴き入ってしまいました。なかなかままならなくなったお身体とは言え、想像の翼をはばたかせることは自由自在、懐かしい風景をそれぞれに思い浮かべていらしたのではないでしょうか。アンコールは、今回なんともう1曲!最後の曲は「Time To Say Good-Bye」、君と旅立とう、という日本語訳でも知られた曲です。ご高齢の方には、耳馴染みのない曲だったかもしれませんが、壮大なオーケストレーションにアレンジされた伴奏と、後藤さんのまだまだ余裕を感じるほどの豊かな声量と美しい声に、「鳥肌が立ちながら聴いていました…、今日、ここに来れて良かったです」とPAスタッフさんも言ってくださったほどに、圧巻でした。人間の声の持つ力、音楽が伝えてくれる力強さやメッセージというのは、言葉にしきれないほどのエネルギーがありますね…。

終演後、居室に戻る入居者のみなさんをお見送りしていただくと「(今日演奏された曲は)全部、しっでだよ~」と、後藤さんへ嬉しそうに言われたおばあさんがいらっしゃったそうです。みなさんの懐かしい思い出が、歌と共に甦ったり、すっかり忘れていた歌の歌詞を、一緒に口ずさんでいるうちに思い出したり…どれだけ、歌というものは、人を元気にしてくれるのでしょうか!歌に秘められた潜在能力は、まだまだ、深く未知なのではないかと思います。そんなたくさんの良いことをもたらしてくれる歌を、また、きっと届けに伺いますね。毎回ご担当くださる事務長のKさん、そして前日のリハーサルからお付合いいただいた気仙沼音響Oさん、今回も忙しいところを駆けつけてくださったムラカミサポート村上充さん、今回も本当にありがとうございました!