お知らせ

なないろの里「つながれ心つながれ力復興支援コンサート」

2019.11.9

特定非営利活動法人クウォーター・グッド・オフィス。東京・赤坂に拠点を置き、若手・新人演奏家や、優れた音楽家に対する活動支援を長年行っている団体です。また、障害者の方たちをご招待してのチャリティコンサートを毎年開催し、その収益金で、離島や被災地に向けた「出前コンサート」を継続的に実施。東日本大震災後、音楽の力による復興センター・東北ともご縁をいただき、宮城・岩手県内の被災地支援コンサートにおいて共催しています。また今回も、仙台フィルの協力の元、インスペクター我妻さんが司会&ステージマネージャーを担当してくださいました。

今年は、仙台市若林区なないろの里地区(旧南小泉・蒲町・長喜城地区の一部)にできた、「多世代交流複合施設 アンダンチ」を会場に「つながれ心 つながれ力 復興支援コンサート」と題して開催されました。出演は、仙台出身のヴァイオリン奏者 大江馨さん、同じく仙台出身で、仙台フィル首席チェロ奏者を務める 吉岡知広さん、東京からピアニストの久保山菜摘さんの3名です。

会場となった“あんだんち”とは、仙台弁で「あなたの家」を意味する言葉。“顔の見える地域の縁側”を目指して、看護小規模多機能型居宅介護サービスを行う事業所、サービス付き高齢者住宅、レストラン、保育園、駄菓子屋、障がい者の就労支援施設、地域のコミュニティスペース等が敷地内に集まっています。庭の真ん中には、ロバも。今回のコンサートは、高齢者住宅の食堂スペースで開催され、お住まいの方だけでなく、近隣の住民のみなさんや居住者・スタッフのご家族、系列の放課後デイサービスに通う障がいのある子どもたちなど、100名にも及ぶお客様が集まってくださいました。

今日のプログラムは、ヴァイオリンの大江さんが中心となって企画。クライスラーの「愛の喜び」のような、愛らしい曲から、ヴァイオリンとチェロが、息を呑むほどに激しくうねるハルヴォルセン「パッサカリア」、美しい編曲の「日本のうたメドレー」など、さまざまな音楽が演奏されました。

現在は国内外で活躍される大江さんの音色は、間近で聴くと一層その美しさ、音色の繊細な機敏に聴き惚れてしまいます。小さな子どもたちのなかにも、一列目からじっと見上げて聴き入る姿がありました。楽器の紹介では、弓の毛が本当に馬の尻尾で出来ているのかどうか?を見せてもらって、子どもたちはびっくり!チェロの吉岡さんはドビュッシー「美しき夕暮れ」、カサド「親愛なる言葉」の美しい2曲を、また、ピアノの久保山さんはショパンの「ノクターン op.9-2」とリストの「ラ・カンパネラ」を。迫力ある演奏にすっかり惹きつけられました。

終演後、思いの外拍手が鳴りやまず、急遽演奏されたアンコールは「アメイジング・グレイス」。夢のように素晴らしかったコンサートの最後に、このコンサートが祈りの時間でもあったことを思い出しました。

なないろの里地区は、震災前は一面田んぼだった地区です。震災後に宅地造成され、現在では2,000人が暮らす新しい街となりました。すぐそばには荒浜に通じる道路が走ります。ここに暮らすみなさんのなかには、暮らすことのできなくなったその荒浜から移り住んだ方も多くいらっしゃいます。もう表向きには、すっかり整ったように見える暮らし向きですが、人の心がどれほど回復ししているのか、傷ついたままでいるのかは誰にも見えません。その隙間を今日のような、美しい音楽で満たし慰める時間は、8年が過ぎた今もまだまだ必要なように思います。

そして、このような機会に、小さな子どもたちや、障がいのある子どもたちが、大人と一緒に出掛けてきてくれることも、本当に嬉しいことでした。出演者のみなさん、クウォーター・グッド・オフィスの四分一さん、八島さんはじめスタッフのみなさま、今年も宮城にお気持ちを寄せていただき、本当にありがとうございました。