お知らせ
南三陸さろん仙台会「かもめコンサート」
- 2019.11.11
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宮城県南三陸町から避難し、その後、仙台市内および近郊に移住した方々による同郷サロン「南三陸さろん仙台会」はもう5年目を迎えました。毎月1回、西本願寺仙台別院教化センターに集まって親睦を深めています。
さて、本日の出演はフルート池田緋沙子さんとピアノ高塚美奈子さんのデュオです。高塚さんは年に2度ほど、南三陸町志津川地区にみんなで歌う会を届けに行っているご縁があり、今日のご出演をお願いしました。
また、池田さんは南三陸町のホテルの女将さんが震災の経験を語り継ぐ会を開いたときに伴奏なさったそうで、何度か志津川を訪れています。
さらに、ボランティアカメラマンの永井秀男さんは星を観る会スタッフとして志津川に隔月で通っていて、ホテルの屋上で天体の解説をしています。震災から8年8か月の月命日、今日は偶然にも志津川に一層ご縁の深い演奏会となりました。
プログラムは、ビゼーやショパンなどのクラシックの名曲のほか、季節の唱歌や美空ひばりなどの親しみやすい作品で構成されていました。仙台では演奏されることが稀だという尾高尚忠作曲のフルート協奏曲が披露され、池田さんは「この第二楽章だけが和の雰囲気があって、黒澤明監督の映画みたいだなと思って選曲しました」と解説しました。高塚さんが志津川での歌の会の様子を紹介し、毎回行くのが楽しみにしていると言ったところ、「ありがとうございます~」と客席から声が上がりました。遠く離れた仙台から故郷を想う気持ちがそこにはありました。「志津川の人は志津川で獲れたウニしか食べないと聞きましたが、そうなんですか?」と高塚さんが問いかけると、多くの方が「当然ですよ!」とでも言うように大きく頷きました。
終演後のお茶のみ会には演奏家も参加して、短い時間ながらもみなさんと交流しました。月命日ということもあるのでしょうか、震災当日のことを話してくださる方がいました。「人生は紙一重って言うけど、本当だよ」と、すんでのところで津波を逃れた様子や遺体安置所でのこと、避難先から転々とし、現在のお住まいに至るまでのことを語っていました。
「避難したのが病院でね、みんなで寒い寒いと言ってた時に配られたのが新聞紙と紙おむつなの。紙おむつを体に巻き付けたら、これが暖かいの!助かったわ」と、意外なエピソードも伺いました。サロンを代表して年長のご婦人が感想を言いました。
「〈かもめコンサート〉とタイトルを聞いた時に、志津川の海を思い出しました。そして、演奏家のみなさんが志津川の話をしてくださったので、心がほどけて、とても和んで聴くことができました」
他のみなさんも笑顔でうなずいていました。演奏家のお二人はその様子に胸いっぱいの様子でした。