お知らせ

泉中央南「歌声サロン」_10月

2020.10.27

仙台市泉区の復興公営住宅で2015年10月から「歌声サロン」を始めました。
復興センターでは音楽家をコーディネートし、
泉中央南町内会と協働してこのサロンを運営しています。

2月を最後にお休みが続いていた泉中央南復興公営住宅の「歌声サロン」ですが、このたびありがたくもサロンを再開させていただけることになりました。
再開第一回目は特別編として、音楽リーダーのお二人によるコンサート形式での開催となりました。コンサートのタイトルは「お元気ですか?コンサート」。なかなか思うように人と会えなくなってしまったなかで、お互いの元気な様子を確認し合える場になればいいなと思います。
8カ月ぶりに集会所を訪れたメゾソプラノ後藤優子さん、ピアノ田村聡子さんもサロンの再開を心待ちにしていました。いつものように季節の飾りをたくさん用意して、会場を華やかにしてくれました。

コンサートは事前予約制とし、席数も制限。参加者にもマスク着用と手指消毒を徹底していただくなど、できる限りの感染防止対策を実施しました。スタートを待つ参加者同士のおしゃべりもいつもより控えめでしたが、コンサートを楽しみにしている様子が伝わってきました。「感染防止対策をしながら、出来ることから少しずつ再開したい」という町内会長さんのご挨拶に続き、いよいよお元気ですか?コンサート開演です!
音楽リーダーの入場とともに演奏されたのは『Time to say Good-bye』。さわやかな青空が広がる今日にぴったりな、すがすがしい1曲で幕開けです。久しぶりに聴く後藤さんと田村さんの演奏に、みなさんあっという間にひきこまれていました。最初の曲が終わって「みなさん、お久しぶりです」と笑顔を見せるお二人に、参加者からも再会を喜ぶ拍手が起こりました。
こんな状況だからこそ、少しでも元気になってもらえるような曲を選んだという後藤さんが次に歌ってくれたのは、古関裕而作曲『鐘の鳴る丘(とんがり帽子)』でした。弾むようなメロディと前向きな歌詞が気持ちを明るくしてくれます。敗戦とその後の厳しい生活にうちひしがれていた日本中に希望を与えたこの曲が、時をこえて現在の私たちにも元気と勇気を与えてくれました。
会えないうちに進んだ季節にあわせて、『故郷の空』と『紅葉』も歌ってくれました。『紅葉』は作詞家の高野辰之が、軽井沢に向かう列車から眺めた紅葉をイメージして詞を書いたといわれています。「今はなかなか見に行けないですが、今日はこちらを紅葉した山だと思ってください!」と壁に飾られたガーラントを示す後藤さんに、参加者もニコニコしながら頷いていました。田村さんとの二重唱で歌われた『紅葉』を聴きながら、頭の中でもみじ狩りを楽しんでもらえたでしょうか。
続いては田村さんのソロで『渚のアデリーヌ』。シンプルで美しいその旋律を、何かの場面で耳にしたことがある方も多いと思いますが、曲名まで知っていた人はあまりいなかったのではないでしょうか。フランスのピアニスト、リチャード・クレイダーマンのデビュー曲として世界的に大ヒットした曲ですが、もともとは作曲したポール・ドゥ・センヌヴィルが次女のアデリーヌが生まれたときに作った曲だそうです。曲名とともに豆知識も吸収しつつ、みなさん田村さんが奏でるピアノの音色にうっとりと酔いしれていました。

後半も懐かしい歌が次々と登場しました。
山口百恵さんの『秋桜』では、こらえきれなかった涙をハンカチで押さえながら聴き入っている女性がいました。他にもぐっと前のめりになったり、何度もうなずきながら聴いている方もいて、多くの人の琴線に触れる曲なんだなぁということが感じられました。
後藤さんと田村さんが二人で歌ってくれた『いのちの歌』には、今日という日に泉中央南町内会のみなさんと再会できた喜びがあふれていました。歌詞を引用して「私たちも皆さまに育てていただいています、ありがとうございます」と挨拶したお二人に、参加者から拍手がわきました。
最後に「元気と勇気が出る曲を」と歌ってくれたのは『あの鐘をならすのはあなた」でした。ぜひ手拍子で参加してください、という後藤さんのリードに合わせ、全員参加で音楽を楽しみました。音楽は聴く楽しみもありますが、一緒に参加する楽しみもあります。みんなで歌うのはちょっとはばかられるときでも、色んな形で音楽に参加してもらえればと思います。
さらにその後のアンコールに応えて歌ってくれたのは『夢で逢いましょう』。久しぶりにお会いできたみなさんと、次は夢の中でも会えたら、という思いを込めた一曲です。後藤さんと田村さんの優しいハーモニーに聴き入っていると、本当にいい夢が見られそうな気分になりました。

コンサートを聴き終えた参加者の表情はとてもやわらいでいて、いい時間を過ごしてもらえたことが分かりました。全て今までどおり、とはいきませんが、町内会長さんがおっしゃるように出来ることから少しずつ、みなさんとの楽しい時間を増やしていければと思います。