お知らせ

メモリアルコンサート vol.29

2020.11.11

音楽の力による復興センター・東北では
東日本大震災の月命日にあたる11日に、市民のみなさんとともに
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考え、
「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
(主催=仙台市/協力=せんだい3.11メモリアル交流館)

11月は時雨の季節。今朝は雨模様でしたが、お昼頃には晴れ間がのぞいて日が差すようになりました。本日のメモリアルコンサートも満席で開演を迎えました。
出演はピアニストの可沼美沙さんです。可沼さんは震災直後からの復興コンサート参加のほか、プレハブ仮設住宅や災害公営住宅へ定期的に通っては〈みやぎの「花は咲く」合唱団〉や〈うたカフェ〉での伴奏を長く担当していただきました。

ワインレッドのドレスで颯爽と登場した可沼さん、最初に弾いたのは映画『ニュー・シネマ・パラダイス』からのメドレーです。今年亡くなった作曲家エンニオ・モリコーネへ追悼の意をこめた選曲でした。
続いては、ドビュッシーの『月の光』が演奏されました。時折、雲間から差す光が演奏家の肩や腕の輪郭を輝かせ、さらに幻想的な雰囲気を生み出していました。
チャイコフスキーの『こんぺいとうの精の踊り』は、可沼さんがかつて演奏会で弾くはずでしたが、東日本大震災で中止となってしまったという思い出があるそうです。「キラキラした音が心にしみわたりました」と或るお客さんが終演後のアンケートに書いていました。

本編最後に選んだ曲は竹内まりやの『いのちの歌』です。可沼さんは歌詞を朗読しました。人が出会うことの奇跡や受け継がれてゆく命についてやさしい言葉で語るこの曲は多くの人の心に響くものでしょう。想いを込めた温かな演奏に思わず涙ぐんでいた人があちこちにいらっしゃいました。


アンコールはバッハ『G線上のアリア』でした。震災直後はピアノを弾くこともできずにいた可沼さんでしたが、その4月に復興マラソンコンサートへ出演することになり、この曲にあらためて取り組むことになったそうです。
「この曲を弾き始めた途端、音楽が身に染みていくことがわかりました」
震災を経験し、またこのコロナ禍の中で日々を過ごす観客のみなさんは大きくうなづいていました。演奏家のこの言葉は、同時にお客さんの実感でもありました。

あっという間の30分、大きな拍手に包まれて無事に終演となりました。或るアンケートに「津波で亡くなった夫の供養と思って聴きに来ています。一生懸命に演奏してくださってありがとうございます」という言葉がありました。このピアノの調べが木枯らしに乗って、海の果てまで届いていればいいな…と思います。