お知らせ
田子西「うたカフェ♪」_10月
- 2021.10.15
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仙台市宮城野区にある復興公営住宅の田子西市営住宅では
町内会主催のサークル活動として、この住宅とその周辺にお住まいの方々の
交流の場「うたカフェ」を2014年10月から始めました。
昔なつかしい歌声喫茶にヒントを得て、みんなで歌を楽しもうという趣向です。
復興センターでは仙台オペラ協会と協働し、音楽リーダーをコーディネートしています。
(仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」)すかっと晴れた空が気持ちの良い仙台。今日は気温が25℃近くまで上がったようですが、湿度がないだけでかなり過ごしやすいですね。「喫茶ひこ」のマスター西垣信彦さんが用意してくれたドリップパックのコーヒーの薫りが、開け放した集会所の玄関から澄んだ空気に流れていました。
芸術の秋の訪れとあってか、今日の「うたカフェ」は満員御礼の大盛況です。音楽リーダーを務める仙台オペラ協会のソプラノ松本康子さんと岩瀬りゅう子さん、ピアノの富樫範子さんと一緒に、本日も楽しく歌っていきましょう!ウェルカムドリンクならぬウェルカムミュージックとして、松本さんが『Ale Ale Ale(アレ、アレ、アレ)』という曲を歌ってくれました。物や人の名前が出てこないとき、「ほらアレ、アレ」「あの人だよ、あの、あの」と繰り返した経験は誰しもあると思います。この曲はそんなアレ・ソレ・ドレを、タンゴのメロディに合わせて楽しく歌っている曲で、自分にも覚えがあるな~と色々共感してしまいます。松本さんは歌はもちろん、ワンピースの裾を翻して軽快なステップも披露。最後はオレ!ならぬ「Ale!!」でフィナーレを迎え、客席からやんやの喝采がおくられました。
楽しい一テンションが上がったところで、今度はみんなで歌いましょう。
1曲目の『アニー・ローリー』は代表的なスコットランド民謡。ウィリアム・ダグラスの詩に曲をつけたもので、曲名のアニー・ローリーはウィリアムが恋い焦がれていた女性の名前です。
後半に高い音が出てきますが、そこを上手に歌うコツとして岩瀬さんが教えてくれたのは「お尻をキュッと持ち上げること」。みんな思わず笑ってしまいましたが、これが効果絶大!お尻を持ち上げると自然と腹筋も引き上げられて、高音が楽に出せるようになりました。
続いての曲は誰しも歌ったことがあるでしょう、『赤とんぼ』です。1番と4番の歌い出しはどちらも<夕焼け小焼けの赤とんぼ>となっていますが、1番は幼少期に見た風景、4番は曲中に出てくる<ねえや>がお嫁に行ってしまい、寂しさを感じている今の自分が見ている風景のことを指していて、そこには時間の経過があると松本さんが解説してくれました。叙情的な光景を思い浮かべ、時の流れを意識して歌いましょう、とアドバイスしてくれました。曲の背景を知ってから歌ったことで、みなさんの歌声にはいっそうの深みが生まれたように感じました。
続く『赤い花 白い花』と『愛の水中花』も曲の世界観に合わせて歌い方に変化をつけました。
松本さんは先月のうたカフェで、参加者の一人から「どうやって歌うのが本当ですか?」ときかれたそうです。本当って何だろう?と考えつつ、松本さんの答えは「なりきって歌うのが一番楽しいと思います!」とのこと。『愛の水中花』を例に「月に1回、松坂慶子さんになることがあってもいいじゃないですか」という松本さんに、確かにねぇとうなずく参加者もいました。さて、うたカフェでは毎回何かしらのテーマにそって曲を選んでいます。時代も曲のジャンルもバラバラに見えた今日のプログラムも、実は【”あ”から始まる曲】という基準で選ばれていました。
そんなわけで富樫さんもテーマにそって、ディズニー映画「リトル・マーメイド」から『アンダー・ザ・シー』をソロの演奏曲に選んだそうです。原曲は海の世界の楽しさを歌ったとても賑やかな曲ですが、富樫さん曰く「今日は雰囲気を変えて、静かな『アンダー・ザ・シー』を演奏します」とのこと。その言葉のとおり、メロディは同じでも曲調が全く異なるアレンジで演奏してくれました。原曲に比べてロマンチックな印象になった『アンダー・ザ・シー』、みなさん違いを楽しみながら聴いていました。
岩瀬さんは朝の連続テレビ小説の主題歌だった『ありがとう』から『青い山脈』へと続く珍しいメドレーを歌ってくれました。歌う前に「よければご一緒に」と会長さんをお誘いした岩瀬さん。本当にいきなりのご指名でしたが、そこはさすがの会長さん。快く引き受けて声を合わせてくれました。本日のうたカフェも楽しく幕を閉じました。お土産のコーヒーを受け取ってニコニコしながら帰っていく参加者の様子に、音楽は本当に気持ちを明るくしてくれると実感します。
帰り際、参加者の方から「松坂慶子になりきって帰ればいいのよね」と茶目っ気たっぷりに声をかけられました。うたカフェの日は歌手になるのも大女優になるのも自由自在!楽しんで参加していただければうれしいです。