お知らせ

鳴瀬サロン「冬のコンサート」へ

2021.12.11

“鳴瀬サロン”は宮城県東松島市鳴瀬地区出身者で自主的に運営されてきた同郷サロン。避難や移転で各地に散り散りになった地元の人たちの交流の場として毎月1回おこなわれ、今回で107回目を迎えたそうです。復興センターでは2014年から毎年冬に復興コンサートをお届けしています。以前は仙台市内で開催していましたが、野蒜市民センターが再建されてからは「地元の人たちと音楽を楽しみたい」との意向で、地域住民にも広く呼びかけています。
今日は季節はずれのぽかぽか陽気に誘われたのでしょうか、予想を超える数の来場者が集まりました。鳴瀬サロンのメンバーも「こんなに来るとは思わなかった…」と目を丸くしていたほどです。
出演はソプラノ齋藤翠さん(仙台オペラ協会)、フルート芦澤曉男さん(仙台フィル)、ピアノ可沼美沙さんのトリオです。翠さんが地元出身であることを告げると、客席から「おおー!」と驚きの声が上がり、「いいぞいいぞ!」と励ますような拍手が起こりました。

プログラムはミュージカル、唱歌、ポップス、オペラ、クラシックと盛りだくさんの内容でした。今日は11日の月命日ということもあり、故郷を想う曲を多く用意してきたそうです。
芦澤さんのフルート独奏による『「七つの子」変奏曲』では温かくやさしい音色に包まれて、しみじみと目を閉じて味わう人がたくさんいました。まぶたの奥にはそれぞれの故郷の、なつかしい光景が浮かんでいたことでしょう。今はもう失われてしまったたくさんのことも、心の中にはあざやかに在るのです。
可沼さんはショパンの『ノクターン』を弾くにあたり作曲家がこの曲に込めたであろう望郷の念に触れ、情感豊かに演奏しました。曲のラストに曇り空の雲間から光が差すような、ほのかに希望を感じさせる余韻が漂いました。
翠さんはプッチーニ『誰も寝てはならぬ』で堂々たる歌いぶりを披露し、観客を圧倒しました。生の歌声、生の楽器の音はお客さんの表情をぱあっと明るくしました。多くの人がコロナ禍で抱えていた鬱々とした気分を吹き飛ばすように思われました。

 

 

終演の挨拶で、鳴瀬サロンの髙橋さんが言いました。
「翠さんのお子さんはまもなく1歳だそうで年明けにはそろそろ歩きだす頃かもしれませんね。
私たちも同じように、新しい一歩、また一歩を踏み出していきたいと思います」
去りゆく人がいて、やって来る人がいる。この10年、みなさんそれぞれに様々な変化があったことでしょう。年の瀬、そして月命日ということでいろいろと思い起こされることの多い日です。人びとが希望を失わずに生きられる社会であってほしいと切に願います。
みなさん、ありがとうございました。(この事業は令和3年度宮城県NPO等による心の復興支援事業補助金を受けて実施しました。)