お知らせ

メモリアルコンサートvol.34

2021.12.14

音楽の力による復興センター・東北では
東日本大震災の月命日にあたる11日に、市民のみなさんとともに
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考え、
「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
(主催=仙台市/協力=せんだい3.11メモリアル交流館)

本日の出演はピアニスト菅野静香さんです。気仙沼出身の菅野さんには、気仙沼市内の老人介護施設や児童養護施設、幼稚園など様々な会場での復興コンサートにご出演いただいています。昨年から続くコロナ禍のためご一緒する機会がなくなってしまい、復興センターのスタッフも今日が2年ぶりの再会。変わらぬ朗らかなお人柄にスタッフも温かい気持ちになりました。

「震災でご苦労されている方へのお見舞いと、亡くなった方のご冥福を祈りながら演奏します」という菅野さんの言葉でスタートした今日のメモリアルコンサート。まずは祈りを込めた曲として『スカボロー・フェア』と『アメイジング・グレース』のイギリス民謡メドレー、そして震災からまもなくYouTubeに公開された『For   Japan』という曲を続けて演奏してくれました。
『For   Japan』を、菅野さんは「またピアノが弾きたいと思えるきっかけになった、私の復興ソングです」と紹介しました。この曲は著名なキーボーディストであるジョーダン・ルーデスが「日本にいる皆のために音楽を贈ります」というメッセージとともに2011年3月13日に公開したピアノ曲です(演奏しているのは3月12日の朝でした)地震のあと、散らばった楽譜を片付ける気にもなれない状態だった菅野さんは、その音の温かさと世界中からの応援の気持ちにとても励まされたそうです。ときに力強く励まし、ときに<大丈夫だよ>と言ってくれているようなそのメロディに、会場のみなさんは引き込まれるようにじっと耳を傾けていました。

気仙沼の復興コンサートでは、夜に開催するコンサートもありました。終演後にお客様とおしゃべりしながら星をみたとき、色んなものが変わっても星は変わらずそこにあることに、菅野さんはとても安心したそうです。そんな思い出を胸に、ここからは<星の音楽コーナー>が始まりました。
神山純一作曲の『エトワール/星座たちの音楽ワールド』は、12星座の星の並びを音符に見立てて作った曲です。全部で12曲ありますが、時間の都合上全ては弾けないので、先着3名様の誕生日にちなんだ星座を演奏してくれることになりました。「この前誕生日だったので、いて座で」などすぐに声が上がり、それぞれどんな曲になるのかみなさん興味津々の様子。では演奏します、と菅野さんがピアノに向き合うと、どこかからかウィンドチャイムのきらびやかな音が聴こえてきました。いったいどこから?と音の出どころを探すと、床に置いたチャイムを菅野さんが足を使って鳴らしていました。ピアノを弾きながらチャイムも器用に鳴らす菅野さんに、お客様も驚いていました。少しずつ雰囲気の異なる3曲の星座ソングのあとは、『見上げてごらん夜の星を』で星の音楽コーナーを締めくくりました。心の中でぜひ一緒に歌ってください、と語りかけた菅野さんの演奏を、みなさんゆったりと体でリズムをとりながら聴いていました。
星の音楽にあわせて、本日の菅野さんはネイビーのパンツドレスに星の模様がきらめくチュールをまとった、星空を思わせるような衣装で登場しました。終演後にうかがったところ、もともとはシンプルなパンツドレスだけだったものに、ご自分で飾りの布を縫い付けたのだとか。いやはや、驚きです。


続く『乙女の祈り』は幼稚園の先生がよく弾いてくれた曲で、幼い菅野さんにとってあこがれの曲だったそうです。その先生とは復興コンサートで再会し、今度は自分が先生の前で弾くことになった思い出深い曲でもあります。明治期に楽譜が伝わって以降日本では広く愛されている曲ですが、母国ポーランドでは認知度が低い曲でした。しかし近年日本に留学していたポーランド人らによってその価値が再発見され、2011年にはポーランドで記念コンサートが開かれました。ご自身の思い出もあわせて「誰かが覚えていたり伝え続けることで、いつか繋がっていくことを感じる曲です」と話す菅野さんによる優雅な調べが心を和ませてくれました。
最後は榊原大作曲『Thanks』を演奏してくれました。「みなさんの前で弾けた感謝を込めて」という菅野さんの<ありがとう>の気持ちが込められた温かい演奏に、聴いているお客様の顔には自然と笑顔が浮かんでいました。
アンコールはお客様にも手拍子で参加していただいて、みんなで『カントリーロード』を演奏しました。菅野さんも鈴をつけたシュシュを足首につけて手拍子をリードしてくれました。気持ちよく晴れた冬の午後、みんなで音楽を楽しむすてきな時間を過ごすことができました。

土曜日の開催とあってか、今日はお子さん連れのお客様がたくさんいらっしゃいました。震災が起きた10年前は赤ちゃんか、または生まれていなかったくらいの小さな子どもたちに、菅野さんは「コンサートが終わったら、ぜひこのメモリアル交流館の展示を見てみてください。この10年間、みんながどれだけ頑張ってきたか伝えてくれています」と優しく語りかけていました。メモリアルコンサートが、震災を知らない世代の子どもたちに記憶や経験を伝えるひとつのきっかけの場になれば嬉しく思います。

左の写真は交流館に飾られているわら製のゴジラです。そのときどきで色んなものが飾ってあるので、展示とあわせてお楽しみください。