お知らせ

田子西「うたカフェ♪」_12月

2021.12.20

仙台市宮城野区にある復興公営住宅の田子西市営住宅では
町内会主催のサークル活動として、この住宅とその周辺にお住まいの方々の
交流の場「うたカフェ」を2014年10月から始めました。
昔なつかしい歌声喫茶にヒントを得て、みんなで歌を楽しもうという趣向です。
復興センターでは仙台オペラ協会と協働し、音楽リーダーをコーディネートしています。
(仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」)

本日のうたカフェは毎年恒例、クリスマスコンサートをお届けします。音楽リーダーを務めるのは仙台オペラ協会のソプラノ松本康子さんと岩瀬りゅう子さん、ピアノは富樫範子さん。喫茶提供のご協力は、「喫茶ひこ」のマスター西垣信彦さんです。年に一度のお楽しみとあって、参加者はワクワクした様子で集会所にやってきました。

クリスマスコンサートの楽しみのひとつは、音楽リーダーのみなさんのすてきなドレス姿です。いつもとは違う華やかな装いで登場したお三方に、わっと拍手がわきました。
オープニングはみんなでハンドベル演奏に挑戦しました。曲はクリスマスらしく『もろびとこぞりて』。富樫さんにベルの持ち方や鳴らし方を習って、いざスタート!よく知っている曲でも、ハンドベルで演奏するのは手数が多くて大変だったかもしれませんが、みなさんなかなかお上手に演奏できていました。田子西では何度かハンドベルにチャレンジしているので、みなさんだいぶ慣れてきたようでした。

 

楽しく演奏したところで、お待ちかねの音楽リーダーによるクリスマスコンサートです。プログラムの前半はクリスマスにちなんだ曲をお届け。まずは松本さん・岩瀬さんが『主よ、人の望みの喜びよ』『アヴェ・マリア』の2曲を歌ってくれました。この時期になると聴くとはなしに耳に入ってくる曲ですが、プロの声楽家の歌声でじっくりと聴くと、やはりすばらしい曲だなぁと実感します。
そのあとは松本さんがヘンデルの「メサイア」より『A Child Is Born』メドレーを、岩瀬さんが『リジョイス』を歌ってくれました。どちらもイエス・キリストの誕生を祝う曲ですが、『A Child Is Born』はゴスペル風にアレンジされたノリの良い曲調で、参加者からは自然と手拍子が生まれました。一方の『リジョイス』は岩瀬さん曰く正調派。「ノリのいい曲ではないですが・・・」とのことでしたが、みどりごの誕生を祝福するメロディに静かに耳を傾けるひとときもまた心地よい時間でした。
そのあとは富樫さんが『赤鼻のトナカイ』を演奏してくれました。子どもたちが元気に歌っているイメージがある曲ですが、ちょっとアレンジされたメロディがおしゃれでずいぶんと雰囲気が違って聴こえます。「こういう曲をピアノで聴くのもいいね」という感想もありました。

プログラムの後半はオペラから1曲ずつ歌っていただきました。
まず松本さんが『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」を。荒川静香さんがオリンピックで使用し、金メダルを獲得した楽曲として有名になりましたね。参加者からも「あ、イナバウアーの!」と声が上がりました。松本さんが歌い出すと空気が変わり、集会所の部屋が舞台に様変わりします。後半に向かってどんどんボルテージが上がる歌声に、みなさん身じろぎもせずに聴き入っていました。ラストの”Vincerò!(私は勝つ!)”が高らかに響き渡ると大きな拍手と「ブラボー!」の声が上がりました。
続いて岩瀬さんが歌ってくれたのは「愛の妙薬」より『人知れぬ涙」です。先ほどの曲が愛を得ることを確信した力強い歌なら、この曲は袖にされ続けていた恋しい人の気持ちが自分に向いた喜びを噛みしめているような曲です。激しい曲調でこそないものの万感の思いが込められた歌声を参加者は集中して聴いていました。
プログラムの最後は『喜びの歌』。「日本人はこれを聞かないと年を越せないですよね」という松本さんに、参加者はうんうんと頷いていました。年末に演奏されることがすっかり定着していますが、この曲を年末に演奏する風習は日本独特のものだそうです。元気に年を越すために、田子西合唱団のみんなで歌い納めといきましょう。「これ以上元気に歌えないってくらい元気に歌いましょう!」という松本さんに応えて、みなさんとっても大きな声で歌ってくれました。何だか晴れ晴れとした気分になれましたね。

 

アンコールには『彼方の光』という曲を歌ってくれました。これはイギリスのボーイ・ソプラノユニット「リベラ」の楽曲で、松本さんと岩瀬さんが最近ハマっている曲なんだそうです。富樫さんはキーボードの音色をオルガンに変えて伴奏を弾き、そこに松本さんと岩瀬さんの歌声が合わさって、荘厳で神秘的な演奏を聴かせてくれました。心洗われるような歌声を聴き終えて、「何だか涙が出そう」とこぼす人もいました。

最後の挨拶のとき、松本さんは「この1年も色々ありましたが、みなさんとこうして一緒に歌えて幸せでした」とお話してくれました。何かとままならないことばかりの1年でしたが、月に1度のこの時間を継続できたことが本当に奇跡で、幸せなことだったのだと改めて実感したクリスマスコンサートでした。
年末年始、体調には気をつけて、どうぞ穏やかにお過ごしください。来年もよろしくお願いいたします!