お知らせ

メモリアルコンサート vol.35

2022.2.11

音楽の力による復興センター・東北では
東日本大震災の月命日にあたる11日に、市民のみなさんとともに
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考え、
「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
(主催=仙台市/協力=せんだい3.11メモリアル交流館)

全国各地で新型コロナウィルス感染症が流行し、緊張感が高まっています。仙台市はまだ蔓延防止等重点措置の対象になっていないこともあり、今日は感染症対策をしっかり取りながら、慎重にメモリアルコンサートを行ないました。
本日の出演はピアニスト大岩千華さんです。本当なら昨年の9月11日に演奏する予定でしたが、その直前に緊急事態宣言が出たため、コンサートは延期となったのでした。今日は満を持しての登場です。ミモザ色のドレスが会場の空気をぱっと明るくしていました。
会場はほぼ満席です。外出もままならない毎日を過ごして、気晴らしや生の音楽を切実に求めている人がたくさんいらっしゃることが見て取れました。

オープニングはベートヴェンのピアノソナタ第8番の第二楽章です。大岩さんは震災直後2011年8月に宮城県石巻市でこの曲を演奏したそうです。まだ学生だった大岩さんは震災後初めての演奏で不安と緊張を抱えていましたが、演奏が進むにつれて人びとの表情が和らいでいく様子を目の当たりにして、音楽が人に良い影響を与えることを確信したそうです。
続くドビュッシー『月の光』では幻想的な雰囲気が会場に満ちて、お客さんはうっとりと聴き惚れていました。「森の中や湖のほとりなど、いろいろな月の風景が浮かんできました」とあるお客さんがおっしゃっていました。

続いて、「人生にはいくつもの葛藤や困難がありますが、それを乗り越えるパワーをくれる曲だと思っています」と紹介したのは、クイーン『ボヘミアン・ラプソディー』。壮大なロックオペラが力強いタッチで演奏され、その調べは滔々とした奔流となってピアノからあふれ出してきました。意外な選曲がお客さんも新鮮だったらしく、終演後のアンケートではとても好評でした。
大岩さんは復興コンサートでしばしば声楽家と一緒に復興公営住宅を訪れることがあります。その経験からシュトラウス二世によるソプラノのための歌曲『春の声』を演奏しました。日本でもよく知られたこのワルツには鳥のさえずりがあちこちにちりばめられていて、聴いていると気持ちが晴れ晴れとしてくるようでした。

感染症の流行や不穏な世界情勢のニュースに鬱々とする昨今ですが、このコンサートは一服の清涼剤となったようです。お客さんは笑顔とともに大きな拍手を惜しみなく贈っていました。
今年度の最後を飾るメモリアルコンサートを無事に終えることができて復興センター一同ほっとしております。ご出演の大岩さん、ご来場のみなさん、どうもありがとうございました。