お知らせ

鳴瀬サロン「冬のコンサート2023」

2023.12.9

東松島市鳴瀬地区で被災し他の市町村に避難した方々が顔を合わせるために始まった同郷サロンの「鳴瀬サロン」は、毎月1回の活動を重ねて、その回数はもはや120回近くになっています。2014年から続くご縁で、毎年1回復興コンサートをお届けしていますが、鳴瀬地区にほど近い東松島市野蒜市民センターが完成してからは、地元住民も一緒にたのしめるようにとクリスマスコンサートを開催しています。

地元の鳴瀬地区出身のソプラノ齋藤翠さん(仙台オペラ協会)を軸にしたアンサンブルでの演奏です。
今日は昨年に引き続き、バリトン鈴木誠さん(仙台オペラ協会)とピアノ可沼美沙さんが登場しました。
オープニングはカンツォーネ『サンタ・ルチア』『帰れソレントへ』で華やかに。
続いてはモーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』からアリア、『ドン・ジョヴァンニ』から二重唱が演奏されました。二重唱『La ci darem la mano』ではジョヴァンニとゼルリーナが心を重ねる場面の演技も加わります。

 

今年を振り返ると、著名なミュージシャンが多く亡くなり、時代の変化を感じる年だったように思います。谷村新司『昴』の歌唱を多くの方が当時の思い出を重ねてか、しみじみとした様子で聴いていました。
可沼さんは坂本龍一『戦場のメリークリスマス』を独奏し、追憶と激しさのある情感豊かな演奏をお客さんはじっと見つめていました。ウクライナやパレスティナで戦争が続いている今、この曲が一段と色濃い切実さをもって胸に響きます。

また、この鳴瀬サロンを長年運営し、まとめ役を務めていた髙橋明さんが今年の春に逝去されました。昨年12月のコンサートではお元気そうな様子でしたので、訃報を聞いた時は信じられない思いでした。
翠さんが「髙橋さんに、この歌を捧げます」と語り、『アメイジング・グレース』が演奏されました。客席には目頭を押さえる方の姿がありました。髙橋さんもきっとどこかで聴いていてくださったと思います。

終演後、演奏家がお見送りすると、たくさんの人が話し掛けてくださり、地元の特産品を手渡す方や「仙台から来ました!本当に来て良かったです!」と大きな声でお礼を言う方などなど、さまざまな形で演奏家に感謝の思いを伝えていました。

時は移り、人も変わりゆくのがこの世の摂理ですが、ほんのひとときでも、ともに音楽を愉しめる場があることの有り難さを改めて感じる年の瀬です。
季節はずれの暖かな午後、野蒜の海はおだやかで、どこまでも静かでした。