お知らせ

荒井東「音楽サロン」_2月

2024.2.20

仙台市若林区にある復興公営住宅の荒井東市営住宅町内会からの依頼で
2018年4月から音楽を楽しむ会をお届けしています。
(仙台市音楽の力による震災復興支援事業)

この荒井東市営住宅に歌の会をお届けするようになってもう5年が経ちましたが、今日になって初めて参加する方がいらっしゃいました。お話しを伺うと「歌が好きなのでこのサロンには興味があったんだけど、家族の病気や自分の入院もあってなかなか来られなかった」とのこと。ようこそお越しくださいました、どうぞ気楽にたのしんでいってくださいね。

さて、今日も音楽リーダーのソプラノ鈴木真衣さんとピアノ田村聡子さんは朗らかに登場しました。まずはウォーミングアップから。「みなさんの体は楽器です。声を出すために、まず起こしてあげましょう」という真衣さんのリードで、頭は軽くトントントン、腕や脚は大胆にバンバンバン!と叩きました。血流が良くなり、ほんわかと体が軽くなった気がしました。

続いては、発声と発音のワークとして北原白秋『あめんぼの歌』を引用しました。「アメンボ赤いな あいうえお 浮き藻に小エビも泳いでる」という有名な詩です。早口言葉ではないですが、慣れない文章をごもごも読んでいるようすだったので、真衣さんは「遠くの人話し掛けるつもりで声を出してみてください」と助言しました。その意識を持つだけで、自然と顔が上がり、視線は遠くを目指し、おなかから声が出るようになりました。
また、ナ行やタ行の子音のさばきを良くするため、舌をぐるりぐるりと口の中で大きく回していました。このワークには誤嚥を防ぐ効果もあるようですよ。

さて、みんなで歌う最初の曲はこの時季にぴったりの『早春賦』です。ゆったりとした三拍子を指揮しながら体を左右に揺らして歌ってみました。そうすると、なんだか楽しい気分になってきますね。この歌は音の低いところから高いところへ駆けあがる部分があり、いわゆる地声と裏声を行き来する歌い方になります。裏声を出す時は、温泉に入ったときのように「はぁ~」とゆったりと息を吐くイメージで脱力することが有効だそうです。みんなで「はぁぁ~」と何度か息を開放する練習もしました。

ここしばらく練習している『春』では、最後の「眺めを何に~」の部分をピックアップ。「高い音まで上がるときは階段で一歩一歩上がるイメージではなく、スキージャンプのようにしゅぱーっと、『ここまで行くぞ!』という気持ちで歌ってください」と、真衣さんはジェスチャー入りで解説しました。それに釣られてみなさんの声には勢いがついて上って行きました。イメージによってこんなに変化するとは、面白いものですね。

後半のミニコンサートで真衣さんは『りんごのひとりごと』『北の国から』など、北国にちなんだ歌を披露しました。素朴なりんごの可愛らしさと、報われぬ恋に身を焦がす女の哀しさ。参加者はしみじみと聴いていました。
聡子さんは時代劇『暴れん坊将軍』のテーマソングを独奏しました。鍵盤をいつにもまして力強く弾くので、キーボードが揺れないように今日は入念に準備していたのです。短い曲ながら運指もダイナミックにジャンプするので、なかなか手ごわい作品でした。聡子さんが「こんなに真っ黒なんですよ」と楽譜を皆さんに見せると、その音符の多さに「あら~」と驚きの声が上がりました。

ところで、昨年から続けて練習してきた『春』を披露するにふさわしい季節が近づいてきました。来月は歌の仕上げをしていきたいところです。どんな隅田川になるのでしょうか。集会所前の広場の桜が咲いていたら、そこで歌うのもよいですね。来月もよろしくお願いします!