お知らせ

杜の里「春が来たコンサート」

2024.3.12

今日は仙台市若林区荒井東にある特別養護老人ホーム成仁杜の里仙台に伺いました。この施設は以前、若林区の三本木地区にあったのですが、東日本大震災で津波被災し、2015年に荒井へ移転したのだそうです。
ご近所の復興公営住宅である荒井東市営住宅の前町内会長さんにおつなぎいただいたのが事のはじまりです。復興センターは、荒井東市営住宅の集会所に毎月「音楽サロン」という歌の会を定期的にお届けしており、新型コロナウィルス感染症が流行する前は杜の里の利用者さんもそのサロンに参加していたのです。この4年近くはみんなで外に出かけることも、施設内でイベントを開催することも控えていたというお話しでした。コロナ禍がやっと一段落したこのタイミングで、コンサート開催となりました。
出演は杜の弦楽四重奏団のみなさん(ヴァイオリン叶千春さん・駒込綾さん、ヴィオラ齋藤恭太さん、チェロ塚野淳一さん)です。長期入居の方々と、ショートステイを利用する方々向けに、2回に分けてコンサートを行ないました。

会場はとても響きの良い空間で、弦の響きがそのまま全身に伝わってくるようです。カルテットが奏でる音の厚みに圧倒されたのか、最初の一音で観客が息を呑む様子がありました。ずっと眠っていたのにぱっちりと目を開けた方もいました。
プログラムは日本の歌を中心に構成され、瀧廉太郎『花』『荒城の月』ほか、『リンゴの唄』『青い山脈』などの歌謡曲が演奏されました。曲に合わせてずっと指揮をする方、手拍子する方、手をひらめかせて踊る方など、それぞれの楽しみ方で生の演奏を堪能していました。

千春さんがヴィヴァルディ『春』第一楽章を演奏しながら客席のあいだを縫って歩きますと、ほ~っと見とれる方や「来た来た!」と大喜びで拍手をする方がいました。
東北の民謡メドレーのときは多くの方が歌い出して、演奏家はその声に笑顔を見せていました。最後の曲が演奏されると、「終わるなんて言わないで~!もっと聴かせてください!」と名残惜しむ声が飛んできました。演奏家のほうもとても名残惜しい様子でしたが、大きな拍手に見送られ、お開きとなりました。
演奏に刺激を受けたのか、或る入居者さんが「俺も若い頃、三味線やっててね…」と思い出話をしてくださいました。また、ずっと横臥したまま目を閉じていた或る方は、表情がやわらぎ血色がよくなっていたようにお見受けしました。
終演後、部屋に戻ってからも「すごかったよ」「いいもの聴いたねえ」と利用者さん同士で話が弾んでいたと施設職員の方からご報告いただきました。また、職員さん達も生の弦楽の迫力に感激していた様子でした。みなさんに喜んでいただけて何よりでした。ありがとうございました。

〈このコンサートは「宮城県芸術銀河2023音楽アウトリーチ普及事業」の一環で行なわれました〉
主催=みやぎ県民文化創造の祭典実行委員会(芸術銀河)
共催=公益財団法人音楽の力による復興センター・東北