お知らせ

仙台フィル×山田和樹さん→山元支援学校へ

2014.1.10

大寒波到来の予報が出て荒天が心配された今朝でしたが、うららかな小春日和に恵まれました。きょうは仙台フィルハーモニー管弦楽団メンバーのカルテット・フィデス(ヴァイオリン松山古流さん&熊谷洋子さん、ヴィオラ御供和江さん、チェロ石井忠彦さん)が宮城県の南部、山元町にある宮城県立山元支援学校へ行きました。
昨年9月、支援学校高等部のCさんとRさんのお二人が修学旅行で仙台フィルのリハーサル会場を訪れたことがご縁の始まりです。ホールのロビーで、おふたりのためにカルテット・フィデスと打楽器の三上さんが演奏をし、指揮者の山田和樹さんがお話しをしたのでした。
「また会いましょうね」
別れ際に交わしたその約束を果たすため、今回はメンバーが学校へ出向くことになりました。

山元町は津波被害の大きかった地域で、JR常磐線はいまだに復旧せず、駅舎は失われたままです。この学校は内陸の高台にあるので直接的な津波被害はありませんでしたが、しかし今も仮設住宅から通学する児童生徒がいます。
教室の窓からは遠くに青く海が見えます。「昔はここから海なんて見えなかったんですよ」と先生が言いました。

今日の復興コンサートは午前と午後の2回行ないます。
IMG_9263s最初に、支援学校と同じ敷地にある宮城病院あすなろ教室へうかがいました。症状が重くて通学が難しい生徒が入院しながら学ぶ院内学級です。 IMG_9232s
 司会を担当したヴィオラの御供さんは、急に音を出してびっくりさせないようにと、演奏の前にはゆっくりと語りかけます。「反応がわかりにくいかもしれません」という先生の心配をよそに、みなさん演奏中は指や足でリズムを取ったり、体を揺らしたり、あるいは「わおー!」と叫んだりと、それぞれに音楽を楽しんでいることが伝わってきました。演奏家もそのダイレクトなエネルギーを受け、いつにも増して楽しそうです。
演奏後、発語がままならない或る方が「きょうは、よかったねえ」とスタッフに話しかけてくださいました。IMG_9305s
また或る方は演奏家に手を差し伸べてぽろぽろと涙をこぼしました。そこにはたしかに音楽を通じた交歓と交感があったのだと思います。

さて、午後は支援学校の多目的室での演奏です。小学部から高等部までの児童生徒が40名と先生方20名が集合して、開演前からすでに盛り上がった雰囲気。1曲目の『小さな世界』が終わるといきなり「アンコール!アンコール!」の声が沸いて、演奏家は「ありがとう」と笑っていました。みんな大好きなジブリナンバーやモーツァルト「Ave Verum Corpus」、ヴィヴァルディ「冬」などクラシックの名曲が演奏されました。 IMG_9380s
中盤で、御供さんが「私たちの仲間もみんなに会いたいって、やってきました!!」と特別ゲストを紹介しました。仙台フィルのヴァイオリニスト小川有紀子さんと指揮者の山田和樹さんが登場しました。お二人は今日ちょうど、おなじく宮城県南部の亘理町立荒浜中学校を復興支援のために訪問していたのです。音楽の授業をした後に全速力で駆けつけてくださいました。
IMG_9434s小川さんのヴァイオリンと山田さんのピアノを加え、カルテットから6人編成にパワーアップ!立奏でのタンゴ「Por una Cabeza」はエネルギッシュでカッコよく、教室をグルーヴで包みました。 IMG_9397s
最後はみんなで校歌を歌いました。発語の難しい生徒も表現できるようにと校歌には振りがついています。手振りを交えた元気な歌声は窓から見えるはるかな海まで響き渡るようでした。
演奏後、メンバーは子供たちにサインと写真を求められてもみくちゃになっていました。でもこれで、修学旅行の時に恥ずかしくてサインをねだれなかった彼女たちの願いがやっと叶ったわけです。

「また会いに来るからね」
そして今日、また新しい約束が交わされました。