お知らせ

六郷「冬のほのぼのコンサート」

2024.12.12

仙台市若林区にある六郷市営住宅は市街地と水田地帯の境にある復興公営住宅です。昨年初めて復興コンサートをお届けし、今年もまたお伺いすることができました。
題して「冬のほのぼのコンサート」、こぢんまりとした集会室ならではの親密さとなごやかさがある演奏会をイメージしました。会場から東を望むと、広々と開けた冬の青空が広がっていました。

本日の出演はクラシックギター佐藤正隆さんと小関佳宏さんです。控室もないような小さな会場ですので、待ち受ける演奏家を目の前にして緊張するお客さんもいるかもしれません。が、復興コンサート活動に数多く参加しているお二人、お客さんを和ませることにかけては右に出る者がいないといっても過言ではないでしょう。
今日はまず正隆さんが「爪」の話を切り出しました。一瞬ぽかんとするお客さんに「ぼくたち、右手の爪は紙やすりで削るんです。ほら」と、ポケットから紙やすりを取り出して実際にやってみせました。
ちょっとした加減で演奏に影響が出てしまうので、ギタリストは爪は大事にしているとの話にみなさん「なるほどね~」と興味深そうに聞いていました。

コンサートは美空ひばりの『川の流れのように』で始まりました。参加者は高齢の方が多いと予想されていたので、お二人は日本の歌謡曲を中心としたプログラムを用意してきたのです。おなじみのメロディに身をゆだねて、お客さんの緊張はすっかりほどけた様子でした。
続いて、クラシックギターと言えば、の定番『禁じられた遊び』が披露されました。かの著名な名曲を爪弾く指先を目の前で見ることができて、お客さんの感激もひとしおのようです。「ああ懐かしい~!若い頃、友達がこれ弾いてたの」という声がありました。小関さんが「出だしの短調部分は弾きやすいのですが、中盤で転調した長調のところは難しいんです。これは上級です」と説明すると、「あ、そうなの~」と改めてこの曲の奥深さに感心した様子でした。

お二人いわく、ギターは減衰楽器に分類されるそうで、一音鳴らすとやがて音は消えてゆきます。「そのはかないところがギターの魅力なんです」「どちらかと言うと低音なので大人向きの楽器です」と言い、『天城越え』を情感たっぷりに弾くのでした。演歌にはそのはかなさと低音がまさに生きますね。

佐藤弘和編『赤とんぼ幻想曲』は童謡「赤とんぼ」をモティーフにして色とりどりの風景が展開する7分の大作です。「アジアを旅するイメージで弾いてます」という正隆さんの解説を手掛かりに、ほのぼの系からノリノリ系、めくるめく情熱系とさまざまなメロディを旅していただきました。あの赤とんぼがこんなに変化するとは、新鮮な驚きがあったのではないでしょうか。
最後は季節にちなんで、クリスマスメドレーが披露されました。小関さんの編曲による『そりすべり』『ホワイトクリスマス』『きよしこの夜』で、軽快に、しっとりと、厳かに、いろいろな冬の光景が見えるようでした。みなさんご一緒に『きよしこの夜』を歌っていただきました。
終演後、自治会長さんが「こんな目の前で、生の演奏を聴けて、本当に素晴らしい経験です!」と感激した様子で言いました。
また、或る方が「リクエストがあるんです…」とお二人に話し掛け、また次回への宿題ができたのでした。
今日はシニア向けのプログラムでしたが、じつは小学生が一人参加していたのです。その子のおばあさんが「いつも落ち着きない孫なんだけど、今日は最後まで聴いてて、びっくりした!」と言いました。その少年は言葉少なに「ギターかっこよかった…」と言いました。知らない曲がほとんどだと思うけど、最後まで聴いてくれてありがとう!
小さなアットホームなコンサートで、ほのぼのとした日になりました。みなさん、どうぞよいおとしを…☆