お知らせ

メモリアルコンサート vol.47

2024.12.11

音楽の力による復興センター・東北では
東日本大震災の月命日にあたる11日に、市民のみなさんとともに
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考え、
「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
(主催=仙台市/協力=せんだい3.11メモリアル交流館)

今年度最後のメモリアルコンサートです。出演はソプラノ鈴木真衣さんとピアノ堀内由起子さんのお二人です。真衣さんは今年の6月までの2年間、ここから徒歩15分のところにある復興公営住宅に毎月通って「音楽サロン」の音楽リーダーを務めてくださっていました。その節はたいへんお世話になりました!

オープニングは戦後に生まれた『花の街』でした。「ちょっと季節はずれのようですが…」と真衣さんはこの歌が作られた経緯や歌詞に込められた意味を語り、涙の先にはきっと明るい世界が待っているだろうという希望を歌いました。
北原白秋と山田耕筰のゴールデンコンビによる『ペチカ』『この道』では、語り掛けるようなやさしい歌声が懐かしい風景を呼び起こしているのでしょう、目を閉じて味わっている方やゆったり体を揺らして聴いている方がいました。
師走は自然とこの一年を振り返る気持ちになりますね。10月に逝去した西田敏行さんを偲び、『もしもピアノが弾けたなら』をお客さんと一緒に歌いました。堀内さんがおなじみの前奏を軽やかに奏でると、客席からはマスク越しに控えめな歌声が立ちのぼり、そのささやくような声がしみじみとした空気を生んでいました。

かつて真衣さんはフランスで、堀内さんはドイツで音楽を学んだということもあり、後半はドイツ歌曲とフランス歌謡がそれぞれ原語で披露されました。
リスト『おお愛せる限り愛せよ』は、かの有名なピアノ曲『愛の夢』の原型になった歌で、いわく「人生は有限であるから心を尽して愛せよ。言葉は愛を語るが、しかし一方で傷つけるものにもなるから、気をつけよ」という内容だそうです。やさしさとドラマティックさが共存するピアノの調べに乗せて切々と歌う様子に、身の引き締まるような思いがしました。
プログラム最後を飾るのは『愛の讃歌』でした。今年のパリオリンピックで話題になった歌ですね。堀内さんの力強い確かな演奏に支えられた真衣さんの歌声は華やかに花開くようでした。
アンコールはプーランク『愛の小径』です。ゆったりとした三拍子にお客さんも揺れていました。失われた愛を悲しみつつも、海へと続く思い出の小径を忘れないでいようという、せつなさとある種の決意がある歌です。つらい過去はあるけれど、未来へ踏み出そう―この歌を選んだお二人の思いが溢れるようでした。

終演後にお客さんから寄せられたメッセージには
「寒い中、心あたたかな時間をありがとうございました」
「訳あって家にこもりきりの日々でした。久しぶりにこんなすてきな時間があったんだ…と思わず涙が流れました」
「明日からまた元気に生活する事の大切さを頂きました」
とありました。
外の寒さを忘れるようなほっこりと温かい時間をご一緒できて、何よりでした。演奏家の皆さん、ご来場の皆さん、どうもありがとうございました。