お知らせ

気仙沼かなエ〜ル「ほっこり♪ぬくもりコンサート」

2024.9.17

気仙沼市で公の側から、不登校の子どもたちやその家族を支援している「気仙沼市教育サポートセンター」。そのサポートセンターが運営する、自立支援教室「かなエ〜ル」に通う子供達やご家族、また子育て中のママさんを対象にコンサートを開催しました。子ども向けと言うことで、見ても聴いても楽しめるように、マリンバの橘敬登さん、ピアノの菅原紀子さんと伺いました。この公演は〈東日本大震災こども未来基金〉(*後述)の助成をいただきました。

会場は、現在は市役所庁舎の会議室として使われているのですが、木の床、そして天井が高く、とても良く響いて驚きました。眩しくて遮光カーテンをしっかり引いても、それでも充分に心地よい響きがあります。マリンバをバラバラにして搬入し、組み立てて、まず橘さんが「レインダンス」を弾き出した時の、湖の水面に、音もなく波紋が広がっていくような気持ちよさといったらありませんでした。これは、よいコンサートになりそうです。実は、もう何年も前に「復興コンサート」で仙台フィルのオーボエ奏者西沢澄博さんと、ピアノの藤井朋美さんに、この会場で演奏いただいたことがあります。恐らくそれ以来、弾かれていなかったのでは、と思われるグランドピアノ。調律をお願いした稲葉さんには、大分御苦労をおかけしたようでしたが、どうにか、目を覚ましてくれました。

始まる頃には、2人のあかちゃんを含む、子どもたち10人弱とご家族、引率の先生や教育委員会の職員さんもちらほら。「アンダー・ザ・シー」がはじまると、ついさっきまでムニャムニャお喋りしていたあかちゃんが、静かに聴き入り始めました。マリンバもピアノも、心地よく響いて、音に包み込まれるような感じです。そしてマリンバの強弱は、こちらの身体にダイレクトに波のように寄せては引いていきます。これはもう、本当に、生演奏だからこその醍醐味。子どもたちの集中力もとても高くて驚きました。

続くドビュッシー「月の光」、「今日は中秋の名月、今日演奏するのにぴったりだな、と思って選んでみました」と言う紀子さんの、ピアノの音色がとても綺麗で、大人も子どもも、うっとり聴き惚れてしまいました。ピアノは、昭和30年代?40年代?のものだろうとのこと、高音は少しキンとするところもありましたが、今のヤマハの音とはやっぱりどこか違っていて、角が削れて柔らかい音がするように思いました。コンサートの始めに「音楽を聴いて、気持ちよくなったら、眠ってもいいよ〜」と初めに話していたので、感想カードにも「気持ちよくて眠くなりました」の感想?告白?が何人かからありました。

その後は、みんなでピアノの演奏に合わせてボディパーカッションに挑戦するコーナーがあったり、マリンバの無伴奏ソロで、マレット3本で演奏する武満徹の組曲「会話」から、またマレット4本を使う「レイン・ダンス」が演奏されました。繰り返されるリズムが心地よく、ついついユラユラ踊り出したくなるような、マリンバらしさの味わえる曲でした。そしてボディパーカッションや、「かなエ〜ル」の支援員をされている元・校長先生Yさんのリード・ボーカルによる、「秋のメドレー」では、会場の皆さんも一緒に。昨年12月には、アデーレのアリアを見事に歌っていらしたYさん、とは言え普段「かなエ〜ル」でその歌声をご披露される機会はほとんどなく、その伸びやかな歌声に、お母さんたちもびっくりされておりました。先生のいつもとは違う一面、子どもたちにも新鮮だったのではないでしょうか?

そして今日のスペシャル・プログラムは、「かなエ〜ル」に通うKちゃんがいつもハナウタで歌っているという、小さなぬいぐるみ”もっち”の行進曲とテーマ曲。Yさんが動画を撮って送ってくだったそのハナウタ動画から、橘くんが採譜。また、アレンジを加えて、伴奏も作ってくれました。Kちゃん本人による歌と共に、橘さん、紀子さんと共演。人前にでるのは嫌かな、緊張するかな、と心配でしたが、いつも一緒の”もっち”も一緒でしたので、自分で考えた登場シーンから、堂々と立派にやり遂げてくれました!最後は可愛らしい花束もいただきました。ありがとうございました!

コンサートが終わってからも、マリンバに興味津々で集まってくる子どもたち。普段は、大事なマリンバに触られるのはNG、でしたが、この日は特別に…。橘さんに叩いて良い場所、響く場所を教わりながら、それぞれ自分の良い音を探してみました。中には、片手で2本のマレットを持つ持ち方を教わって、早速挑戦してみる子も。橘くんが種類の違うマレットを、追加して持ってくると、一度離れた子もまた戻ってきたり、しばらく楽器で遊ばせていただきました。そしてその後は、みんなはそれぞれのいつもの時間に…。なんだか少しだけ、いつもとは違う午後のひととき。楽器の体験は、少人数だったからこそできたことでもありました。こうした体と心をフル動員して、丸ごと五感で感じる体験を、どんな子どもたちにも届けられたら…と思う一日でした。

*〈特定非営利活動法人東日本大震災こども未来基金〉は、愛知県豊橋市の忠内政惠さんと滋賀県草津市の三上きせさんがこの基金に委ねられた遺産をもとに「忠内政惠・三上きせ記念基金」を設け、その資金から、東日本大震災で被災した地域の子どもたちを支援する活動をしている団体を助成するものです。音楽の力による復興センター・東北では、この基金から助成を受け、被災地域の子どもたちに音楽を届け続けています。