お知らせ
荒井東「音楽サロン」_9月
- 2024.9.17
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仙台市若林区にある復興公営住宅の荒井東市営住宅町内会からの依頼で
2018年4月から歌を楽しむ会をお届けしています。
(仙台市音楽の力による震災復興支援事業)照りつける日差しの中にも、さらりとした秋の気配が感じられるこの頃です。芸術の秋に誘われてか、数年ぶりに参加した方もいて、賑やかな会となりました。音楽リーダーのメゾソプラノ後藤優子さんとピアノ田村聡子さんも「お久しぶりです!」と嬉しそうでした。
まずはしっかりストレッチと発声を行なったのち、合奏に挑戦していただきました。唱歌『虫の声』に合わせて、トライアングル、鈴、ギロ、タンバリンなどを鳴らします。みなさん普段は楽器を持つ機会がないので、「新鮮!」「たのしい!」と面白がっていました。
好評な様子に、音楽リーダーのお二人は「いいですね、またやりましょう!」と、何かアイディアがひらめいていたようでした。続いてはみなさんで『あざみの歌』を歌いました。この歌は倍賞千恵子をはじめ、多くの歌手が歌いました。或る参加者は「男性が歌ってたのを覚えてる」と言い、レコードを2,500円で買った思い出を話し始めました。しかし、「そのレコード、津波で流されちゃったから、今はもう無いのよ」と残念そうに言いました。今はどこに行っちゃったんでしょうね。そんなふうに思い出のレコードや本や写真や色々な大事なものは、遠いどこかに流れ着いているのでしょうか。
後半のミニコンサートで、聡子さんは唱歌『夕焼小焼』のアレンジ版を演奏しました。この季節に聴くと、気持ちがすっと落ち着く感じがしますね。
優子さんは十五夜にちなんで『荒城の月』を、また、ゆく夏を惜しんで『少年時代』を歌いました。多くの人が目を閉じて、じっと耳を澄ましていました。
そして、参加者のお一人が大好きだという谷村新司の『群青』を、お二人は心をこめてドラマティックに演奏しました。大きな拍手の中でその方は感無量の様子で「…ありがとうございました」と、深々と頭を下げました。
『異邦人』を歌ったあと、或る方が「この歌、私の母が好きでね、お葬式の時に流したのよ」と言いました。「まさか聞けると思ってなかったから、びっくりしちゃった!」と嬉しそうでした。もうすぐ秋のお彼岸で、ちょうどいいタイミングでしたね。
歌が心に触れると、ぽろぽろと思い出があふれてくる。そんなちいさな思い出たちを共有できるのが音楽サロンの良いところです。