お知らせ
「種次ふれあいコンサート」開催しました
- 2014.6.7
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仙台市若林区種次地区は津波被害の大きかった地域です。真っ平らな地面の東に目をやると、津波でまばらになった防風林が心細げに立っているのが見えました。
近隣の東六郷小学校は閉鎖されたままで、犠牲者追悼慰霊碑が建てられています。この地域にはかつてのどかな田園風景が広がり、それぞれの家に居久根(いぐね)という屋敷森があることで有名でしたが、津波の塩害で枯れ、そのほとんどが伐採されてしまいました。種次の集落にはおよそ50世帯がありましたが、住民は応急仮設住宅やみなし仮設に居を移し、震災から3年が経過してようやく数軒が自宅再建で戻ってきたそうです。
今日の復興コンサートの会場となった種次公会堂の周辺も2か月近く水が引かなかったそうで、大広間の柱には約150cmの高さに浸水の痕が残っています。あちこちに避難してばらばらになってしまった住民どうしの交流を絶やしてはいけない、と地域の民生委員の方が中心となって毎月ここで「種次サロン」という集まりを開催しています。健康体操や手芸、お茶飲み会など、さまざまな活動をしているそうです。
今日はその種次サロンに復興コンサートをお届けしました。あいにくの小雨模様でしたが、予想を超えて約30名の方が集まりました。出演はメゾソプラノ歌手の後藤優子さんとクラシックギタリストの小関佳宏さんです。
お二人は「歌が好きな人が多い」との前情報から、唱歌や昭和の歌謡曲を中心とした懐かしい曲を用意していました。「リンゴの唄」「浜辺の歌」「テネシーワルツ」「愛の讃歌」などが演奏されると、お客さんは手拍子したり体を揺らしたり、口ずさんだりして楽しそうにしていました。その様子に後藤さんも小関さんも乗ってきて、演奏はさらにエネルギッシュに、トークはさらに楽しいものになり、客席はしばしば笑いに包まれました。
音楽は演奏する方も聴く方もいきいきとさせ、相互にエネルギーの対流が起こることを今日もつくづくと実感しました。うっとりと聴き惚れる方の傍らで、懐かしい歌に青春時代を思い出したのか、涙を拭いていた方もいました。終演後、参加者の何人かがきらきらした笑顔でやって来て、演奏家に「本当に良かったです」「また来てください」「余韻が残って今日はもう寝られないかも」と感想を伝えていました。別の仮設住宅の方からさっそく「お二人で是非うちのサロンに来てください!」と熱烈なラブコールを頂戴しました。出演者は演奏家冥利に尽きるといった様子で、「また来たいのできっと呼んでください」と種次のみなさんと再会の約束を交わしていました。