お知らせ
たなばたクインテットサマーコンサート
- 2014.8.6
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仙台市北部にある泉区のみなし仮設にお住まいの被災者の方と、泉中央地域にお住まいの方の交流を目的とした、泉区中央市民センターの通年事業「泉中央交流カフェ2014~ともに楽しむ~」の一環として、「たなばたクインテットサマーコンサート」が開催されました。舞台左右のすてきな七夕かざりは、みなし仮設の方々が前回のサロンで作った飾りを、支えあいセンターいずみのスタッフが飾り付けてくださいました。今日からちょうど、仙台七夕まつりも始まります。
出演は、今年1月に結成されたばかりの木管五重奏団“たなばたクインテット”。メンバーは、仙台フィル首席クラリネット奏者のダビット・ヤジンスキーさんを中心に、仙台フィルからフルートの宮嵜英美さんとホルンの溝根伸吾さん、仙台在住のフリーランス奏者であるオーボエの山岸亜貴さん、そして東京藝大とパリ地方音楽院とを卒業し、今秋からパリ国立高等音楽院修士課程に修学予定のファゴット奏者、村瀬徹さんの5名です。
“たなばたクインテット”は、今年9月に開催されるミュンヘン国際音楽コンクールへ出場することが決まっており、コンクールに向けた練習のために村瀬さんが仙台にいらっしゃるタイミングで復興コンサートに出演いただくことになりました。
今日のプログラムは復興コンサートにしては珍しく、クラシック曲のみの構成です。モーツァルトやダンツィといった古典派と、バーバーやシェイベルという現代の作曲家の曲を、ポーランド出身のダビットさんが、日本語で曲目紹介しながらのコンサートとなりました。最前列に座ったのは3~5歳の子供たちとお母さん、お父さんたち。何人かのお子さんは楽器や演奏家の様子をじーっと見つめて目を離しません。ご年配の皆さんは最初やや硬い様子でしたが、モーツァルトの美しいハーモニーに次第に緊張もほぐれていったようでした。
続いて演奏されたバーバー「夏の音楽」には、『夜空の星の流れを感じるところもあれば、闇の世界から色々な動物達が出て来て、まるで話をしていたり、にぎやかに笑ったりと、たのしい一夜を過ごしている様子が見えるような曲でした』と、終演後のアンケートに書いてくださった方もいました。
シェイベル「五声部の交換」はメロディらしいメロディというものがなく、様々な音の断片が、5つの楽器に受け渡されていくモザイクのパズルのような曲。いわゆる“現代曲”と言えるのですが、楽器のいろいろな音色が楽しく、また息を飲むような緊張感のある掛け合いもあって、とても面白い曲でした。アンケートを読むと「この曲が一番印象に残った」という方が多くいらっしゃったのには驚きました。
最後は、木管五重奏という編成に多くの作品を書いたダンツィの「木管五重奏曲 Op.68 No.2」。現代曲を聴いた後に、この古典派の健やかで明るいハーモニーはなんともほっとするものですね。
アンコールでは、今日から仙台七夕まつりで、さらに出演者が“たなばたクインテット”ということもあり、「たなばたさま」の歌を会場の皆さんで歌いました。世代を超えてみんなが一緒に歌える歌があるというのは、良いことですね。終了後には、出演者も交えて、みなし仮設の方を中心に茶話会も開かれました。ご参加の方々は、たった今、目の前ですばらしい演奏を披露した若いメンバーにお話ししたいことがたくさんあった様子で、あちこちで話に花が咲き、時間いっぱいまで会場はにぎやかでした。
支え合いセンターの或る職員さんが言いました。 「このサロンには宮城県沿岸部から避難してきた方が多くいます」 「◇◇さんはご家族を亡くして、当初は泣いてばかりだったのですが、最近は落ち着かれました。今日は楽しそうにしてますね」 「この1年、サロンに来てなかった○○さんがいらしてびっくりしました。よほど楽しみにしていたんですね、あんな笑顔は見たことがないですよ」みなし仮設のみなさん、不便な暮らしはまだしばらく続きそうですが、今日はひととき、楽しんでいただけましたら幸いでした。
“たなばたクインテット”のみなさん、9月のミュンヘン国際音楽コンクール、ご健闘をお祈りしております!