お知らせ
雄心苑「秋のほがらかコンサート」
- 2015.9.19
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シルバーウィークの初日は晴天に恵まれました。澄み渡る青空のもと、仙台から車で2時間弱の石巻市雄勝町へと向かいます。気温がぐんぐん上がり、久しぶりの夏日となりました。
今日は特別養護老人ホーム雄心苑の敬老会へお招きいただきました。雄心苑は雄勝湾を見下ろす高台にあるため津波の直接的な被害は免れましたが、震災当日は200名以上の避難者が詰めかけ、その後約1か月は避難所となっていたそうです。道路もライフラインも分断されたため孤立してしまい、大きくSOSと書いたシーツを屋上で振り救助を求めるなど、かなり逼迫した状況にありました。
「そのとき唯一の情報源がカーラジオでした。職員がラジオで聞いた情報を紙に書きだして壁に貼っていたんです」と施設長の原さんが語りました。
当時の入居者66名は震災の1週間後にようやく自衛隊のヘリコプターで山形県へ移送されましたが、環境の変化で体調を崩し、亡くなった方もいらしたそうです。建物にも天井落下や地盤沈下など大きな被害があり、1年間の閉館を余儀なくされました。50数名いるスタッフの半数が津波で自宅を失い、ご家族を亡くした方は20名にも及ぶそうです。 施設利用者の中にも自宅を流され、帰るべき場所をなくした方が多くいらっしゃるとのことでした。
震災から4年半が経ち、雄心苑には穏やかな日々が戻ってきたようですが、利用者の方や職員のみなさんの胸中はいかばかりかと思います。年に一度の敬老会の機会にみんなでほっとするひとときを過ごしていただきたく、復興コンサートをお届けすることにしました。実は2日前の大雨で雄勝地区には土砂崩れや冠水の被害が出て、道路は不通とのうわさもあったのです。予断を許さない状況でコンサートの開催が危ぶまれたのですが、今朝になって「道路は無事に通行できます」との連絡を施設長さんからいただき、いざ雄勝へ、と私たちは向かいました。
今日は敬老会ということで、会場には紅白幕が張り渡されて華やかです。およそ50名の入居者さんが集まりました。お化粧をしたりコサージュを着けておしゃれしている人がたくさんいました。式典では最高齢105歳のご婦人を筆頭に、卒寿、傘寿、米寿の方々にお祝いの品が手渡されました。おめでとうございます。
さて、いよいよ「秋のほがらかコンサート」の幕開けとなりました。出演は金管五重奏「スージー絆ブラス」のみなさん(トランペット高田真由美さん・櫻井伸泰さん、ホルン山本大さん、トロンボーン鈴木智さん、チューバ古山理樹さん)です。オープニングは『吟遊詩人のソナタ』でした。鈴木さんの軽妙なトークで、ほんわかと和やかな雰囲気でコンサートは進行します。『魅惑のリズム』『サマータイム』などを織り込んだガーシュウィン・メドレー、なつかしの昭和歌謡『そして、神戸』など和洋取り混ぜたプログラムです。『マツケンサンバ』では多くの方が手拍子して、実に楽しそうです。踊るように両手をひらひらさせる方、手は思うように動かないけれど指先で拍子を取る方、身を乗り出す方、などそれぞれの楽しみ方をしていた様子です。最後の「オーレッ!」の掛け声で、わっと大きな拍手が沸きました。
最後はヘンデルの『ハレルヤ』と黒人霊歌『聖者の行進』が組み合わされた、明るく朗らかな印象の曲でした。終わった瞬間にしゅぱっ!と右手を高々と、真っすぐに挙げた方がいました。車椅子に乗ったご婦人でしたが、その勢いと高さに一瞬目を奪われました。その真意はわかりませんが、でもあの方なりの「ブラボー!」だったのではないかしら、と感じました。演奏家も「みなさんがにこにこと笑顔で聴いてくださるので演奏していて楽しかったです」と言いました。「被災地」という言葉が、宮城県では「2011.3.11の震災」と「2015.9.11の豪雨」の両方を指すようになりました。東北に限らず全国各地で火山の噴火や台風の被害があり、“災害列島”という様相を呈しています。雄心苑の日常がこれからもどうか穏やかなものでありますようにと願います。どうぞお健やかに、またお会いしましょうね。