お知らせ

「街なかコンサート in AER」開催しました

2015.10.4

復興センターは仙台クラシックフェスティバル2015「街なかコンサート」の
企画運営を担当しています。
2011年の春から初夏にかけて多くの音楽家有志が
連日にわたって復興コンサートを行なった思い出の場所で、
演奏する人も、演奏を聴く人も、音楽が本来持つみずみずしい力に触れて
元気になっていただきたいと願って開催いたしました。

◆ 街なかコンサート in AER《うたごえの響き~大海原を越えて~》◆
【日時】10月4日(日)  〈第一部〉開演12:30/〈第二部〉開演13:00
【会場】AER(アエル)1階アトリウム
【出演】〈第一部〉宮城県石巻好文館高等学校音楽部、ピアノ藤井朋美
〈第二部〉ソプラノ齋藤翠(仙台オペラ協会)、メゾソプラノ菊池万希子、バリトン千葉昌哉、ピアノ可沼美沙(仙台オペラ協会)
【曲目】〈第一部〉合唱『石巻・わがふる里』『小鐔詩』『心を込めて花束を』『歌うたいのバラッド』ほか
〈第二部〉アルディーティ『くちづけ』、ロッシーニ『今の歌声は』、ビゼー『闘牛士の歌』、モーツァルト『アヴェ・ヴェルム・コルプス』ほか

せんくら最終日、本日の街なかコンサートは合唱と声楽で構成したプログラムをお届けしました。サブタイトルに“大海原を越えて”とあるのは、支倉常長率いる慶長遣欧使節団がイタリアに到着して今年がちょうど400年の記念の年であることにちなみ、かつて石巻の月の浦から出帆し遥か彼方の地へ赴いた先人たちに、これからの未来を切り拓く石巻の若者たちのイメージを重ねました。石巻好文館高等学校音楽部のみなさんは昨年に引き続き、街なかコンサートへ是非に、と今年も出演をお願いしました。
良く晴れた休日、会場には明るい陽光が差し込んでいます。その日差しのように明るく澄んだ若者たちの歌声が会場内に響きわたって、通り過ぎるようとする買い物客を釘づけにします。次々にお客様が立ち止まって、うっとりと聴き入っていました。いつしか会場は人でいっぱい、その人数は200を超えていたように見えました。歌っている彼らの姿からは「ああ、歌うことが大好きなんだなあ」ということが伝わってきて、見ている方もつい笑顔になってしまうようです。自分のお子さんやお孫さんを見るかように目を細めている大人たちがたくさんいて、アットホームな雰囲気の中、きっと音楽部のみなさんは緊張せずに日頃の練習の成果が充分に発揮できたことでしょう。歌い終わったときに、或る一人のお客様が「本当に素敵なうただったので、その御礼にお花を差し上げたくて…」と花束を持ってきました。大きな拍手の中、人数分の真っ赤なガーベラが部長さんに手渡されました。みなさんの歌が聴いている人の心に響いたのですね。うれしいサプライズでした。

第二部では、声楽家による本格的なオペラアリアをお楽しみいただきました。女性ソリストは華やかなドレスを身にまとって登場すると、秋の日差しがスポットライトのように射していて、一段と輝いて見えました。
まずはそれぞれのソリストが独唱で3曲を歌います。たった一人ですが、その歌声に200人のお客様は圧倒されているようでした。「すごいねえ」「さすがだねえ」というため息のような感想があちこちで聞こえました。齋藤さんと千葉さんがオペラの一場面を演じながら歌う軽妙な『パパパの二重唱』、『アヴェ・ヴェルム・コルプス』のしっとりと深い三重唱など、人間の声のヴァリエーションが堪能できるプログラムでした。『ハバネラ』では菊池さんの情熱的な歌と可沼さんのピアノが絡み合うように激しく、陰影濃い劇的世界を盛り上げて、わっと喝采が沸きました。
今日出演する齋藤さんも菊池さんも可沼さんも震災後まもない時期に、まさにこの場所で行われた復興コンサートで演奏していただいたのです。あれから4年半が経過し、同じ場所で、たくさんの人びとと明るい陽射しに見守られながら歌えることの有り難さと不思議を感じました。きっとご本人たちも感慨深いものがあったことでしょう。
アンコールでは、好文館高等学校音楽部のみなさんに再び登場いただき、ソリストのみなさんと一緒に『花は咲く』をうたいました。お客様の中にも一緒に口ずさんでいる方がたくさんいました。その光景を見て、あの頃のことをふと思い出しました。そして、ここにいる高校生の彼らが当時まだ小学生で、石巻という土地で育っていることを思うと何とも名状しがたい気持ちで胸がいっぱいになりました。
音楽を介していろいろな人が、この場と、この時間を、共に居るということ、
あらためてそのことが一つの奇跡のように大切に感じられた秋の日でした。