お知らせ

「希望の芽生え in なとり」にて

2015.11.27

IMG_5418jpg-今日は名取市社会福祉協議会主催の第41回名取市福祉大会へうかがいました。
名取市は津波で甚大な被害を受け、いまだに応急仮設住宅やみなし仮設にお住まいの方が多くいます。その被災した方々を支援する福祉関係者ご自身もまた、被災者という状況にあります。年に一度開催される福祉大会は地域福祉に長年尽力された方を表彰する会ですが、今回はおよそ600世帯の仮設住宅にもお声がけして、支援する人もされる人も一緒に音楽を楽しみたいとのご依頼でした。
IMG_5377-出演はジャスミン・トリオ(フルート櫻井希さん、クラリネット菊池澄枝さん、ピアノ鷲尾恵利子さん)のみなさん。復興コンサートへ数多くご出演いただいています。
今回は福祉関係者の参加が多いので、「音楽を通じた復興支援(復興コンサート)とはどのようなものか」についてお話しいただきながらの演奏をお願いしました。
会場には、福祉関係者のほか仮設住宅にお住まいの方々など、350名を越える参加者が集まりました。オープニングはエルガー『愛の挨拶』です。この優しいメロディは、きっと多くの方にとって聞き覚えがあるはず。“クラシック音楽”への緊張をほどいてくれるような気がします。菊池さんは「タイトル通り、ご挨拶代わりにこの曲を演奏することが多いですね」と言いました。
復興コンサートでのプログラムの組み立てや曲の選び方など、音楽家の工夫を感じていただけたのではないでしょうか。
IMG_5315- バッハ『主よ、人の望みの喜びよ』のあとは、それぞれの楽器を説明しながらのソロ演奏となりました。
サン=サーンス『クラリネットソナタ 第2楽章』、グルック『妖精の踊り』、ショパン『ノクターン 第2番』でそれぞれの楽器の音色をたっぷりとお楽しみいただきました。
IMG_5312-櫻井さんは、震災直後に『荒城の月』を演奏したときに「荒れ果てた城だなんて縁起でもない」とお叱りを受けたというエピソードを話しました。
IMG_5369-当時は多くの方がささくれだったような気持ちでいたので、言葉には特に敏感でした。そんな中、演奏家自身も手探りで「この曲はどうだろう」「よろこんでいただけるだろうか」と考え、悩みながら復興コンサートを続けてきたのです。
IMG_5292-この4年8ヶ月でお客さんの様子もだいぶ変わって、リクエスト曲も明るいものが増えてきました。復興コンサートのプログラムは、それぞれの演奏家がお客様との生のやり取りをつづける中で育ててきたものと言えるのではないでしょうか。
その後はがらりと雰囲気を換えて、なつかしの日本のうた特集です。菊池さんは「もし震災がなければ、私たちはこのような曲を演奏する機会はおそらくなかっただろうと思います」と言いました。
『北国の春』では客席から口ずさむ声が自然と湧き上がり、会場全体が温かい空気に包まれました。
IMG_5422-最後には『いつでも夢を』を会場の皆さんに歌っていただきました。悲しみや涙を歌声が明るい気持ちに変えてくれるというこの歌詞は、まさに演奏家たちの願いそのものであり、復興コンサートの意図するところでもあります。
盛大な拍手と「アンコール!」のかけ声に「もちろん用意してますよ!」と菊池さんが応え、客席から笑いがどっと沸きました。IMG_5436jpg-
アンコール曲は美空ひばり『川の流れのように』です。一緒に口ずさむ方、頬にながれる涙をぬぐう方、じっと聴き入る方の姿がありました。
万雷の喝采のなか、無事終演となりました。IMG_5460jpg-

名取市では平成30年を目処に災害公営住宅への入居を完了させる方針とのこと、不自由な仮設住宅暮らしはまだ続きます。復興コンサートを息長く続けていきたいとあらためて思う日でした。