お知らせ
気仙沼「冬のほっこりコンサート」ツアー_第1日
- 2015.12.2
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今日から2日間にわたって気仙沼市内の仮設住宅や施設を訪問し、復興コンサートをお届けすることになりました。題して「冬のほっこりコンサート」、出演は仙台フィルハーモニー管弦楽団のメンバーによる弦楽四重奏団カルテット・フィデス(ヴァイオリン松山古流さん・熊谷洋子さん、ヴィオラ御供和江さん、チェロ石井忠彦さん)のみなさんです。
まずは、松崎地区にある特別養護老人ホーム恵風荘にうかがいました。リハーサル中にやや大きめの地震があり、一時はどうなることかと思いましたが、本番には支障なく済みました。施設職員の方が「なんだかもう地震には慣れちゃって…」と苦笑していたのが、せつなく感じられました。会場のホールにはすでにクリスマス仕様の飾り付けがなされていて、今日のコンサートにぴったりの雰囲気です。シャンシャンシャンと鈴の音にのせて『Winter Wonder Land』で幕を開けました。
会場に集まった方のほとんどが車椅子に乗っていて、思うようには自力で動けない様子でした。認知症やその他のご病気で意思を表すのもままならない、一見すると何の反応もないと思われる方も多くいらっしゃいます。
しかし、一生懸命に身を乗り出して聴こうとする方や、ゆっくりうなずくように頭でリズムを取る方などがいました。また、演奏家の問いかけに「なんだかわからないねぇ!」と元気に応える方もいました。
演奏が終わって、演奏家が客席のあいだを通りかかったときに「ありがと」とちいさな声で言って、手を差し伸べてきた方がいました。演奏家はその手をしっかりと握って「こちらこそありがとうございました」と、互いに笑顔を交換していました。その夜は、旧新城小学校住宅を訪問しました。集会所がイルミネーションで彩られ、演奏家は「わぁきれーい!」と驚きの声をあげていました。この電飾は毎年冬の恒例なのだそうです。辺りに街灯が少ないだけにひときわ輝いて見えました。
およそ15畳の会場には25名を越える方々が集まり、満員御礼状態です。19時からの開演でしたが、小学生も参加してだんだんにぎやかになりました。
開演する前、御供さんが女の子たちに「ちょっと相談があるの」と話を持ちかけました。「この曲とこの曲とでは、どっちがいいかなあ?」との問いに「んー、わかんない」「こっちかなあ」と一緒に考えてくれました。
コンサート序盤ではクライスラーやヴィヴァルディの小品で弦楽奏ならではの響きを楽しんでいただきました。
楽器の紹介で「弦楽器は何百年もの間にたくさんの人を経て受け継がれてゆくんです」という話に、「へええ、すごいねえ」と感心している人がたくさんいました。
中盤はちびっ子たちのための特別プログラムです。御供さんと女の子たちで突然打ち合わせが始まり、『ジングルベル』で共演することになりました。
最初は恥ずかしがってもじもじしていた子たちも鈴を振り始めるとだんだん独自のリズムが生まれてきて、結構複雑なアレンジに聞こえました。可愛い音楽家の演奏に周りの大人たちも大喜びです。
このほかにも大好きなアニメの曲やクリスマスソングがプレゼントされました。
その後は大人のための昭和歌謡特集です。美空ひばり『港町十三番地』が演奏されると、あるお父さんが「いやあ、ビールほしくなるねえ」と言ってみんな大笑い。みなさんの明るくてアットホームな雰囲気に演奏家もいっそう興が乗って、冗談が飛び交い、笑いの絶えない終盤となりました。
アンコールはリクエストにお応えして『おいらの船は300トン』です。この仮設住宅にお住まいの方の中には漁船に乗っていた人もいらっしゃるとのことで、打ち合わせのときに「これは定番ですよ」と言われていたものです。大きな手拍子と「エンヤコラセーエ、エンヤコラセ!」の掛け声が室内に満ちて、宴会のような盛り上がりでお開きとなりました。
高揚した気分で名残を惜しむ子どもたちに、演奏家は「ちょっと弾いてみる?」と誘いました。目を輝かせてヴァイオリンを試す子や、自分の体より大きなチェロにぶら下がるようにして弾いている子もいました。
一方、大人たちは「次回はアルコール入りでお願いします」「是非!」と笑い合っていました。楽しい夜をありがとうございました。おやすみなさい。