お知らせ

田子西「うたカフェ♪」_2月

2017.2.17

仙台市宮城野区にある復興公営住宅の田子西市営住宅では、
町内会主催のサークル活動として、
この住宅とその周辺にお住まいの方々の交流の場
「うたカフェ」を2014年10月から始めました。
昔なつかしい歌声喫茶にヒントを得て、みんなで歌い、
おいしいコーヒーとおしゃべりを楽しもうという趣向です。
復興センターでは仙台オペラ協会と協働し、
音楽リーダーとなる音楽家をコーディネートしています。
(仙台市音楽の力による震災復興支援事業)

奇妙なほどのぽかぽか陽気で、春一番かと思われる強風が吹く午後です。今日も「うたカフェ」には新しい参加者がいらっしゃいました。「お友達に誘われて来てみたの」と、徒歩8分のおとなりの復興公営住宅からいらしたそうです。ようこそ!
今日も音楽リーダーは仙台オペラ協会のソプラノ松本康子さんと岩瀬りゅう子さん、ピアノ伴奏は富樫範子さんです。
ウォーミングアップは富樫さんの担当で、音楽を交えた脳トレでみなさんを盛り上げます。
まず、片手を握りこぶしにして、もう一方の手のひらに重ねます。それを、「どんぐりころころ」を歌いながら左右を交互に換えていくというワークでした(言葉ではうまく説明できていませんが)。
しかも「はい、お隣りの人と協働作業で!」とハードルを上げたので、みなさん「えええ?」「あれ?」とさらにあたふたし、「わーむずかしい!」と無邪気に笑い合っていました。こういうワークは一所懸命になれるのですっきりしますよね。
こんがらがった後はゆっくりと背伸びして身体をゆらし、呼吸を整えました。
今日はまず、『禁じられた遊び』を歌いました。よく知られた曲ですからみなさんすぐに歌えました。哀愁を帯びたメロディーに引き込まれてなんだかしんみりした空気になったところへ、松本さんがコツを伝授します。
「悲しい歌詞の歌は悲しく歌ってはいけませんよ。むしろ明るい発音で歌いましょう。子音をはっきり出すのもポイントです」
松本さんは口角と頬の筋肉を上げてKやSの子音を発音して見せました。目もパッチリ開いて顔全体を使う必要があるんですね。特に東北弁は発音が不明瞭と言われることがあるので、たまにはこういう意識的な発音をしてみるのもいいかもしれませんね。
「三拍子にはまりすぎると語尾が落ち込んで暗くなりがちです。これは大きなフレーズでとらえて歌うと良いです」
最初の一拍にアクセントを置いてその後を惰性で流してしまうと、どうも締まりの悪い表現になります。次のフレーズへと向かうエネルギーを高めていくように歌ってみると、ぐっと生き生きしたように思われました。それまでとぼとぼ歩いていたのが、大きなストライドでぐいぐいと歩くような感じです。
「暗い詞の曲は明るく歌う、明るい歌はもっと明るく歌うんです。この世に”暗い歌はない”と思ってください」
おお、そうなんですね!目からうろこが落ちたような思いがしました。

続く歌はがらりと雰囲気を変えて朗らかに『雪山讃歌』です。これはなんと9番まであるんですね。岩瀬さんの提案で、奇数番は男性が、偶数番を女性が歌うことにしました。少数派の男性は立ち上がって負けじと歌います。力強い男声の後に澄んだ響きの女声が交互に繰り返されるのが、スキーのスラロームのような面白さを生んでいました。
短い歌とは言え、さすがに9番も歌うとくたびれますよね。さあ、美味しいコーヒーで一服しましょう。今日も宮城野区新田の喫茶ひこマスターの西垣さんがお店自慢のブレンドコーヒーを淹れてくださいました。「おいしいのよね~」とおかわりを求める人もいて、大人気です。
と、今日初めて参加した方が、岩瀬さんに指揮のしかたを質問しました。岩瀬さんがホワイトボードに三拍子と四拍子の軌跡を描くと、それをなぞって腕を振っています。特別レッスン開講ですね。趣味で何か音楽をやっていらっしゃるのでしょうか、とても興味深そうにしていました。

コーヒータイムのミニコンサートでは、岩瀬さんの独唱による『広い河の岸辺』、松本さんと岩瀬さんの二重唱でマルティーニ『愛の喜びは』、松本さんの独唱で『愛の讃歌』が披露されました。
なかでも『愛の讃歌』では松本さんの渾身の歌声とそれに呼応する富樫さんの情熱的な伴奏で、聴いている人たちを圧倒しました。感極まって涙ぐんでいる方がちらほらいらっしゃいました。最前列の常連さんは「もう、何て言っていいか…」と泣き笑いの様子。音楽の力はすごいなあと改めて感じました。
お見送りしていると「ここに来るのがホントに楽しみなの」「いつもありがとね」とお声をいただきました。みなさんがいらしてくださるからこの会も続けることができているのです。これからも一緒に楽しんでいきましょう!