お知らせ
みやぎの「花は咲く」コンサート2017開催しました
- 2017.3.5
-
仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」
≪みやぎの「花は咲く」合唱団≫
おもに宮城野区の仮設住宅、復興公営住宅、防災集団移転地区、
または津波被災地域にお住まいのおおむね60歳以上の方々と、
毎月1回合唱の練習をしています。いよいよ本番の日を迎えました。さいわいにも暖かな日曜日です。
合唱団のみなさんはよそゆきの春らしい明るい装いでやって来ました。男性チームはネクタイ姿でビシッと決まっています。今日は特別ですからね、気分も華やいで良い高揚感がありますね。
会場の外側には早くからお客さんが並び始めていました。開場と同時に急ぎ足で客席に向かいます。
これまでの復興コンサートやうたカフェなどに参加してくださった人たちの顔も見えます。合唱団メンバーがそれぞれのご近所さんに宣伝した効果があったようです。以前合唱団員だった方と顔を合わせて「あら!お久しぶり~!」と手を握って再会を喜ぶメンバーもいました。
本日の出演は仙台フィルメンバーによる弦楽四重奏(ヴァイオリン小川有紀子さん、ヴァイオリン平松典子さん、ヴィオラ清水暁子さん、チェロ北村健さん)、そして合唱指揮は齋藤翠さん、ピアノ伴奏は目々澤亜紀さんです。
コンサート前半は弦楽四重奏のプログラムです。
春にふさわしい構成で、ヴィヴァルディ「春」やシュトラウス「クラッフェンの森」など、小鳥のさえずりがちりばめられた曲が披露されました。弦の響きが重なりあって旋律が立体的に立ち上がってきます。豊かな音色に全身包まれると、まるで森に居るような気持ちになり、次々と目の前の光景が変わってゆくような面白さがありました。
さて、いつも合唱指導している翠さんですが、今日はソプラノ歌手として弦楽奏と共に1曲披露しました。しっとりと『私を泣かせてください』を歌いました。
「震災直後は、この歌は悲しすぎて歌えなかったんです」と語る翠さん。お客さんも客席の一番後ろで見守る合唱団メンバーも感慨無量の様子でじっと聴いていました。
前半の締めはNHK大河ドラマ「真田丸」のテーマ曲でした。ヴァイオリンとヴィオラの3人が立ち上がって弓を振るうさまはサムライのような勇ましさと凛々しさがあってとてもかっこよかったです。切れ味良い演奏に客席がわっと沸きました。
ここでいったん弦楽四重奏は退場し、替わって合唱団が登場しました。みなさんかなり緊張の面持ちです。最後の一人が並び終わるまでお客さんはずっと拍手を続けて温かく迎え入れてくださいました。ありがたいことです。やはりコンサートはお客さんと演奏者双方でつくりあげる協働作業だなと改めて思いました。
翠さんの腕が動き、亜紀さんのピアノが鳴りはじめます。合唱団の緊張はここで「歌おう」という決心へと変わります。
まずは『知床旅情』、そして『学生時代』『若者たち』を歌いました。なかなかハモるのが難しかったのですが、この1か月でぐんと安定してきたように感じられます。
ソプラノパートの伸びやかな歌声をアルトパートがしっかりと支えて、なかなか堂々とした歌いぶりに見えました。もちろんこのホールの響きの良さに助けられている部分も大きいのですが、これまで積み重ねてきた練習は合唱団の自信となって彼らを支えてくれているのだと思われました。
1曲終わるごとにお客さんから大きな拍手が送られていました。
コンサート最後の曲はもちろん『花は咲く』。弦楽四重奏も加わって全員で演奏します。伴奏の亜紀さんはメンバーへの励ましをこめて「日頃の練習の様子を見ていて、みなさんの結束力がすばらしいなあと思いました」と語りました。
この合唱団が最初に行なったコンサートのときはレパートリーはこの1曲だけだったことを思うと、今日のこの舞台は感慨深いものがあります。
合唱団結成からおよそ3年半、歌の成長と共にメンバーそれぞれの環境も変わりました。みなさんの胸中にはいろんな思いが去来していることでしょう。万感の思いをこめた『花は咲く』、今回はこれまでとは異なり、楽譜を見ずにお客さんに向けて歌い掛けます。お客さんにも一緒に歌っていただこうと翠さんは客席に向かって指揮をしました。
合唱団が始まるきっかけとなったこの歌にはやはり特別な思いがあります。それはきっとお客さんにとってもそうで、一緒に歌う姿も多くありました。涙をこらえきれない人たちもいました。
温かなアンコールの拍手に応えて、『家路』を歌いました。歌うひと、聴くひと、それぞれの新しい家での暮らしが安らかで温かなものでありますように、という祈りをこめて。
万雷の拍手の中、コンサートは無事終演となりました。
舞台裏に戻りほっとした様子の合唱団メンバーは笑顔だったり泣き顔だったりさまざまでしたが、どの顔も充実感で輝いていました。みなさん本当にご立派でしたよ!終演後に出演者全員で記念写真を撮りました。合唱団のコンサートに毎回ご登場いただいているヴァイオリンの小川さんが言いました。
「私はあまり褒めるということをしないのですが・・・みなさん本当に上達しましたねえ」
メンバーはわあっと大よろこび。そして、「いつか仙台フィルと一緒に第九を歌ってほしいと思っているんですよ!」と小川さんから大きな宿題を託されて、メンバーは「ええっ!」と目を丸くしていました。
それはともかく、今日のところはコンサートの成功を祝いましょう。みなさん本当にお疲れさまでした!