お知らせ

福島・ホッとサロン「てとて」へ

2017.3.8

福島市社会福祉協議会では東日本大震災と福島第一原子力発電所事故による避難者の交流する場として〈ホッとサロン「てとて」〉を定期的に開催しています。復興センターでは年に2度、夏と冬に復興コンサートをお届けしています。
今回は「笑顔になれる癒しのコンサート」と銘打って、福島市音楽堂小ホールで開催することとなりました。会場にはおよそ60名の参加者が集まりました。
本日の出演はヴァイオリン小池まどかさん(仙台フィル)、チェロ八島珠子さん(仙台フィル)、そしてピアノ澤田和歌子さんのトリオです。
特に八島さんは福島市のご出身なので、出演を是非にとお願いしたところ、快くお引き受けいただきました。
プログラムはクラシックをメインに構成され、エルガーやクライスラーなど耳なじみのある作品から、カスキやコダーイなどもしかすると゛初めまして”な曲も紹介されました。
演奏の合間のトークで、八島さんが「〇〇パン屋さんがね…」と地元ならではのお話をすると「ああ…」と客席から笑い声が起こって親近感がぐっと増したようでした。
コダーイの『ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲Op.7』については、子供の頃に好きだったお祭りを引き合いに出して、「道の向こうから山車が来るでしょ、その祭囃子に似てるなあと思うんです」と語りました。みなさんの脳裏にはそれぞれの故郷のお祭りの情景が浮かんだのではないでしょうか。小池さんのヴァイオリンと八島さんのチェロが掛け合いしつつ駆け引きしつつ、まるで野原を疾走する二頭の馬を思わせる力強い演奏でした。
澤田さんはピアノ独奏でカスキの『ブルレスケ』を披露しました。躍り出したくなるようなはずむタッチが楽しい曲です。どこかしら東洋の香りもあって、初めて聞く曲ながら肌になじむような、懐かしいような感じがしました。聞きなれない作品でも演奏家のお話しで敷居が低くなります。知らない曲に出逢えるという新しい楽しみがありますね。
ベートーヴェンの『メヌエット』を演奏する前に、小池さんは別のヴァイオリンを取り出しました。それはサロン参加者の或る方が手づくりしたものだそうです。趣味の範疇を超えた、細部まで丁寧に仕上げられた美しい楽器です。その方は震災前から独学でヴァイオリン製作をしていたそうで、震災当日は着の身着のままで避難し、数日後にやっとの思いで楽器を取りに戻ったそうです。思いのこもったヴァイオリンが目の前で演奏される様子に、その方は感無量の面持ちでじっと耳を澄ましていました。

プログラム後半では『知床旅情』と瀧廉太郎の『花』をご一緒に歌っていただきました。歌声に包まれて演奏家も楽しそうです。歌うとやはりちょっと元気になりますね。
コンサートタイトル通り、多くの方が笑顔になっていました。アンコールでも『青い山脈』を歌っていただきましたが、歌声がいっそう大きくはつらつとなって、ちょっと圧倒されそうなほどでした。
拍手喝采の中でコンサートは無事終わり、社会福祉協議会のスタッフさんたちも安堵と達成感で嬉しそうです。舞台袖では或るスタッフさんと八島さんが「〇〇先輩がね…」とこれまたローカルな話題で盛り上がっていました。これもまた復興コンサートならではの風景です。
今日の記念にと全員で集合写真を撮った後、さきほどのヴァイオリンを製作した方がやって来て「この楽器はいかがでしたか?」と演奏家にアドバイスを求めました。小池さんと八島さんは「弦の張力でコマが傾くので…」「ペグの軋みを取るには…」など親身になっていろいろと具体的な回答をし、「今日はとても勉強になりました。ありがとうございます!」とその方はさらに感激していました。よかったですねえ。
このサロンは今後も続くそうですので、また夏ごろに復興コンサートをお届けに行きたいと思います。次回もどうぞよろしくお願いします!