お知らせ
七ケ浜町「いきいきサロン代ヶ崎」へ
- 2017.3.11
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宮城県の東端、七ヶ浜町の代ヶ崎浜地区は塩竈湾に突き出るようにして在る、まさに「突端」といった雰囲気の集落です。
ちょうど6年前の今日、あの津波はこの小さな集落をも襲い、死者十数名、全壊40戸、大規模半壊100戸という大きな被害をもたらしました。あれから時は過ぎ、現在は自宅再建したり、災害公営住宅への入居が完了して、地域の人びとは前向きに歩み始めているそうです。
塩竃湾を一望できる多聞山のふもとに、地区の避難所が新しく建てられました。早稲田大学と地域の人びとが話し合いを重ね、協働してつくったもので、明るく広々としていて心地好い雰囲気でした。
地域の高齢者がここを会場にして「いきいきサロン代ケ崎」を毎月開催しているそうです。2002年から続くこの集いは東日本大震災でいったん中断しましたが、「こういうときにこそ集う場が必要だ」という伊藤区長さんの声掛けで再開したそうです。地域住民によって自主的な運営がなされ、送迎ボランティアや料理ボランティアなど役割分担があり、大勢の人が関わって「おらほのサロン」として定着しています。
多くのお年寄りが毎回楽しみに参加しているそうで、今日も60名を超える参加者が早朝から次々とやって来ました。台所では料理ボランティアの方々が忙しく立ち働いています。あっちもこっちもすごい賑わいですね。今日のサロンは区長さんの呼びかけで黙祷で始まりました。窓から見える塩竈湾は日差しにきらめいて穏やかです。あの日のことが夢だったのではないかと思われるほどに静かでした。
本日の出演は、復興コンサートでおなじみの杜の弦楽四重奏団のみなさん(ヴァイオリン叶千春さん、ヴァイオリン門脇和泉さん、ヴィオラ齋藤恭太さん、チェロ塚野淳一さん)です。
オープニングはモーツァルト『アイネクライネナハトムジーク』第一楽章で華やかに。
演奏が始まった途端、参加者のみなさんはすうっと音に惹きこまれて、しーんと耳を傾けていました。じつは事前の打ち合わせで役員の方が「おしゃべり好きな人が多いから、うるさいかもしれないよ」と心配していたのですが、それは全くの杞憂だったようです。
さらに、会場の構造が演奏に合っていたようで、弦の響きがすみずみまで充分に届きます。体じゅうで浴びるようにたっぷりと音をたのしむことができました。
復興コンサートであちこちへ伺いますが、概して浜の人たちは明るいと言うか反応がよく、千春さんが楽器の仕組みを説明すると「ほー」「おー」と感心する声が上がり、曲名当てクイズでは指名を待ちきれずに答えを言ってしまう人多数で、あちこちで「あははは」と笑いが起きていました。
男性は往々にして照れ屋というか、女性に比べると反応が控えめなのですが、それでも曲に合わせてつま先が揺れていたり、口元が動いていたりして、みなさん愉しんでいらっしゃることが伝わってきました。毎回のサロンで歌う時間があり、独自の歌本をつくってみんなで歌っているとのことなので、今日は弦楽四重奏にあわせていくつか歌っていただきました。中でも『リンゴの唄』のはつらつとした歌声は演奏家を驚かせるほどでした。坂本九のヒットメドレーも朗らかに体を揺らして一緒に歌っている方がたくさんいました。歌うことの素朴な楽しさがここにはありました。
演奏後はみんなで記念写真を撮りました。「ちょっとー!ほら、みんなも混ざらいん!」と昼ごはんの支度をしていたボランティアのみなさんも加わって、大ボリュームの撮影となりました。
さて、みなさんお待ちかねの昼食はおひな様をイメージしたちらしずしをメインに、手づくりのお惣菜の数々がならんで彩りゆたかな一皿が供されました。演奏家もおよばれして美味しくいただきました。以前、この町の近くに住んでいたという塚野さんが「あの辺りに無人の野菜販売所があってね…」とローカルな話をすると、「あ、それうちのです!」と隣に座ったおばさまが言い、「え、そうなんですか!」と互いに爆笑していました。
今年度最後のサロンは盛況のうちにおひらきとなりました。「いきいきサロン」の看板にはいつわりなしですね!ほんとにみなさんお元気です。
参加する人、企画する人、お手伝いする人、そのみなさんがこのサロンに傾ける熱意に感銘を受けました。さらには海とともに生きる人びとのたくましさをも感じ、私たちもエネルギーを頂戴したように思います。
会場を出る人たちから「演奏よかったねえ」「こういうの初めて聞いたよ」「楽しかった!」「また聴きたいなあ」とのお声をいただきました。その様子を見て企画担当の役員さんもうれしそうでした。
みなさんこれからもどうぞお元気で!またうかがいますね。