お知らせ

復興支援コンサートin仙台トラストシティ

2017.3.12

仙台市青葉区一番町にある仙台トラストシティでこの週末は東日本大震災復興支援のためのさまざまなイベントが行なわれています。その一環として「復興支援コンサートin仙台トラストシティ」が開催されました。ここは2011年6月に数日にわたって「復興マラソンコンサート」をおこなったゆかりの場所でもあります。
会場には、かなり早くから並んで開場をいそいそと待つ人びとがたくさんいました。およそ100名が来場し、用意した席はきっちり満席になりました。
今日の出演は、昨日の七ヶ浜町に引き続いて杜の弦楽四重奏団のみなさん(ヴァイオリン叶千春さん、ヴァイオリン小澤牧子さん、ヴィオラ齋藤恭太さん、チェロ塚野淳一さん)です。連日おつかれさまです!
数多くご参加いただいている復興コンサートを紹介する形で今日の演奏は進行しました。前半はクラシックの名曲をたっぷりと楽しんでいただきます。
モーツァルト、バッハ、ヴィヴァルディ、そしてハイドンによる弦楽奏ならではの作品が披露されました。
今日の会場はとても響きが良く、残響も多めなので、弾き終わった瞬間の静寂が、静寂という「音」で聞こえるかのようでした。お客さんはその静寂をしっかりと吸いこんで、「ほぅ」と小さく溜息をついてから、そうっと拍手をします。余韻をこわすのを躊躇しているかのようでした。静かなさざ波のように喝采が会場に広がります。今日は音楽を聴きなれた人が多いのかもしれませんね。
昨日は宴会のようなにぎやかさにあふれたコンサートでしたし、お客さんによって毎回こうも雰囲気が変わるのか、演奏会は本当になまものだなあと面白く感じました。
復興コンサートではすっかりおなじみの地元民謡『斎太郎節』が演奏されると、「西洋の楽器でまさか民謡を?」と興味津々に身をのり出して聴く人がいました。エンヤトットのリズムに自然と体が揺れます。前後に体が揺れて、まるで船を漕ぐように見えました。ふと、この客席がたくさんの漕ぎ手を伴う一艘の大きな船のように思われました。音楽が身体におよぼす影響はすごいですねえ。
岡野貞一『故郷』について千春さんは、震災後数年はこの曲を演奏するのもつらかったと語りました。
しかし、この歌を聞きたい、歌いたいという声が寄せられるようになり、だんだんと演奏回数が増えていったそうです。
「お客様に泣かれてしまって『ああ弾かなければよかった』と思ったこともあります。でも、その方が『やっと泣けた。ありがとう』と言ってくださったんです。その泣くに泣けなかった状況はどんなにつらかったろうと想像するのですが、音楽がその気持ちをほんの少しほどくことができた、そのことがうれしかったです」
そして、『故郷』をお客さんにも一緒に歌っていただきました。思い起こせば震災当日、日が暮れて街じゅうは停電して真っ暗の闇の中、このトラストタワーにだけ明かりが灯っていました。その様子を昨日のことのように思い出します。あれから6年が過ぎ、この場所でたくさんの人がともに「音楽をしている」こと、この平穏無事を本当に「有り難い」ものだと思いました。
今朝も未明にやや大きめの地震があって心配しましたが、コンサートはつつがなく終演し、名残惜しむような温かい大きな拍手に見送られるようにして演奏家たちは会場を後にしました。お客さんたちの満足したような表情にスタッフ一同も安堵しました。
会場の外では、夕方のキャンドルライト点灯に向けて仕度が進んでいました。
音楽もこのキャンドルのように人びとの心に灯る小さな明かりになってほしい。そんな思いとともにこれからも地道に活動して行こう、と気持ちを新たにする7年めの今日でした。