お知らせ

メモリアルコンサート_5月

2017.5.11

音楽の力による復興センター・東北では今年度、
奇数月11日に「メモリアルコンサート」を企画制作しています。

東日本大震災の月命日にあたる日、市民のみなさんとともに、
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考えました。
(主催=仙台市)

東日本大震災から6年2か月となる今日、せんだい3.11メモリアル交流館にて今年度最初の「メモリアルコンサート」を開催しました。
会場には早くから開場待ちの列ができ、およそ70名の来場者がありました。椅子の数が少なくてご不便をお掛けしてしまうのですが、お客さん同士で席を譲り合う姿が見受けられ、ありがたいことだなあと思いました。また、この交流館や隣接の荒井駅には「今月はメモリアルコンサートあるんだよね?」と時々問い合わせが来ていたそうで、昨年度の実施でこの企画が定着していたことも知りました。市民のご協力があってこのコンサートが成り立っていることを改めて感じました。
出演は復興コンサートに何度もご参加いただいているソプラノ齋藤翠さん(仙台オペラ協会)、テノール佐藤淳一さん(仙台オペラ協会)、フルート山田みづほさん、ピアノ掛田瑶子さんです。モーツァルトから日本の歌謡曲や子守唄、ディズニー曲などをソロ、デュオ、トリオ、カルテットと編成を替えながらバラエティに富んだプログラムを披露しました。
オープニングは地元仙台のご当地ソング『青葉城恋唄』です。おなじみの歌にお客さんはうっとりと耳を傾けていました。翠さんが「震災後はこの歌の〈あの人はもういない〉という詞がつらくて歌うことができませんでした」と語り、多くの方が「そうだったねえ」と言うかのように頷いていました。
掛田さんは「復興コンサートに参加し始めた当初は、もしかして私たちは他人の家に土足で入り込むようなことをしているのではないかととても不安になりました」と経験を語りました。
「でも、どこに行ってもみなさん優しく受け入れてくださって笑顔で聴いてくださるので、むしろ私たちの方が元気をもらって帰ってくることが多いんです」と笑顔を見せました。本当にそうですよね。そして、ピアノ独奏でドビュッシー『アラベスク』を演奏しました。
佐藤さんは復興コンサートで石巻市の長面浦にある神社の神楽殿で歌ったときのことを話しました。津波の影響でもう人は住めない所となってしまった地区ですが、この神社のお祭りがいまだに地域の人びとの繋がりの核になっていることを実感したそうです。誰しもが忘れることのない故郷への思いをこめて『北国の春』を歌いました。客席にいた男性客何名かの口元が歌に合わせて一緒に動いているのが見えました。
山田さんは日本の子守唄メドレーをフルート独奏しました。「これを聞いたらみなさん眠っちゃってるかもしれませんが…」とお客さんを笑わせつつも、しっとりと哀愁ある笛の音に多くの人が目を閉じてしみじみと聴き入っていました。演奏後、お客さは眠るどころか、心洗われたようなさっぱりとした表情をしていました。
最後は皆さんと一緒に『見上げてごらん夜の星を』を歌いました。お客さんの声が温かく大きくふくらんで、傍で聴いていると感動で胸が詰まりそうでした。この歌声は海まで届いているでしょうか。
客席から演奏家へ「〇〇ちゃーん!」「ブラボー」と声援が飛ぶほどに親しくたのしい雰囲気の中でコンサートは終演となりました。地下鉄の通行音に負けないほどの惜しみない拍手が鳴り渡ります。スタンディングオベーションする人もいました。
ご来場の皆さん、演奏家の皆さん、どうもありがとうございました。