震災発生時のお住まい:千葉県松戸市
現在のお住まい:千葉県松戸市
曲名:J.S.バッハ「エア」、パッヘルベル「カノン」
ヘンデル「オンブラ・マイ・フ」
あの日、なぜか、我が家のインコたちが早くから騒ぎ出して、不思議に思っていました。パソコンの調子も悪く、早々に電源を切りました。そうして、やってきたあの激しい揺れ! 千葉県ですので、後で震度5強だったと知りましたが、私には、生まれてはじめての大きな地震で、何度も「今回は、もうだめか」と思ったものです。
その後からの、絶え間ない余震。経験のないことにおびえるインコたちをなだめるために、少しの揺れでも飛び起きる日々が続きました。神経が参って、安眠できません。感情がどこか麻痺してしまっているようでした。自分が自分でないような感覚だった気がします。
そんな週末を過ごした週明け、私は、愛聴している或るインターネットラジオ番組を聴いていました。午後からの「オッターヴァ・モデラート」という番組です(今、この番組はないのですが)。この番組のプレゼンターさんは、震災発生のとき、スタジオで番組の放送をしてらっしゃった方で、私は、その方が大好きでした。それで、いつもと変わらぬ声に安心しながら、ぼんやり、聴き始めたのです。
そのとき、そのプレゼンターさんが、「被災された方々に」と振り絞るような声とともに、連続してかけてくださったのが、バッハの「エア」であり、パッヘルベルの「カノン」であり、ヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」であり、曲名のところでは省略したのですが、やはりバッハの「主よ人の望みの喜びよ」だったのです。
私は、この4曲を聴いたとき、初めて泣けました。同時に、自分が、感情を必死で押さえ込んで泣くのを自分に禁じていたことにも、気がつきました。泣いたら、恐怖心に負けて、だめになると思い込んでいたからでしょうね。泣いたことで、私は、ようやく、自分を取り戻せた気がします。
クラシック専門チャンネル「OTTAVA」では、なじみの曲で、私も大好きな曲ばかりなのですが、震災が発生してから、緊張してがちがちになっていた私が、自分を取り戻すことになった、まさに”再会”の曲です。
そういう経験を持つので、さらに甚大な被災をされた東北の方々が、演奏会での仙台フィルの演奏で泣いて、楽になったというお話、よくわかります。仙台フィルも、被災されながら、「音楽の力」を頼りに、粘り強く活動しておいでですね。私にとって、世界一のオーケストラです!