私は学生時代よりずっとサッカーを続けてまいりました。音楽は聴くのが好きで、クラシックのコンサートに出かけたりするのが楽しみでした。
2年前の夏に、大学のサッカー部の4年に一度のOB会があり、その際、仲の良かった後輩が2人被災したことを知りました。彼らのために何かしてあげたい、力になりたいという思いが心のなかにずっとありました。
何をしてあげたら良いのか解らず、本人たちの聞いたところ、忘れないでいて欲しいとの答えがかえってきました。
具体的な行動を模索するうち、昨年の3月に新聞でボランティアバスツアーの記事を見つけて参加することにしました。
陸前高田市で津波到達点に桜を植樹し、翌日には名取市の箱塚桜団地仮設住宅で懇親会がありました。懇親会ではツアー参加者が手品や紙芝居を披露し、住民の方々に喜んでもらいました。
私はケガをして、サッカーができなくなりチームを引退した折に、妻に誘われてピアノを習い始めたところでした。ツアーの主催者にもそそのかされて、3ヶ月の腕前を披露することになりました。古い映画音楽を弾きましたが緊張してまったく曲になっていませんでした。それでも皆さん喜んでくださいました。次回また訪問して再度挑戦することをお約束して、ご容赦いただきました。
ただ、帰り際に住民の方に「もっとみんなの知ってる曲を弾いてくれよ。乗れないよ」と笑顔で助言をいただきました。
昨年8月にもツアーがあり参加しました。やはり箱塚桜団地仮設住宅での懇親会があり、ピアノの演奏を披露するつもりで助言通り『花は咲く』を毎日のように練習しました。
ところが当日になるとやはり緊張して、右手だけしか弾けませんでした。もとより人に聞かせるレベルではなかったのです。それでも住民のみなさんは一緒に歌ってくれました。「良かったよ」と言ってくれました。必死の思いだけは伝わったかもしれません。「またおいでよ」「もうちょっとうまくなってると良いね」とひやかされつつお別れしました。
今年の3月にもツアーがあり、3度目にしてようやく両手で演奏することができました。途中何度か怪しいところがあったのですが、なんとか最後まで弾くことができました。住民の方々とツアー参加者の全員で歌うことができました。演奏後、ものすごい拍手をいただき、私自身大変感動いたしました。住民の方々(おばちゃんたち)から「ようやく弾けるようになったね。頑張ったね」と言われ努力が報われた思いがしました。一緒にツアーに参加した方からも「歌っている途中で泣きそうになった」と聞かされて大変恐縮いたしました。
音楽の持つパワーを知らされました。音楽は直接人の感情に作用すると思いました。震災というつらい体験をされた方々を少しでもいやしたり楽しませたりできたなら私自身が大変幸せです。初心者の拙い演奏で知識も経験も未熟な者が申し上げるセリフではないのは重々理解しているつもりですが、率直に実感しました。是非この思いを皆さんにお伝えしたいと思い投稿させていただきました。