お知らせ

若林西「うたっこ会」_5月

2017.5.24

仙台市若林区の復興公営住宅で2015年9月から、
季節に一度の「うたっこ会」を始めました。
復興センターでは音楽家をコーディネートし、当住宅自治会の
若林西せせらぎ会と協働しながらこの会を実施しています。
(仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」)

少し蒸し暑い空気の中にシロツメクサの香りが漂う朝、お久しぶりのうたっこ会には14名の参加者が集まりました。「〇〇さん、こっちに座らいん!」「こないだはどうもね~」「足の神経痛がね…」「私も腰がさぁ…」と集まった途端におしゃべりが始まり、人が増えるごとに話し声もどんどんクレシェンド、たいへんな賑わいでした。体のあちこちが痛いと言いつつも、みなさんとてもお元気そうですよ。

さて、音楽リーダーはいつものようにメゾソプラノ後藤優子さんとピアノ田村聡子さん。お二人は偶然にも淡い黄色のカーディガン姿で登場しました。ここにも名コンビぶりが表れましたね。
まずはウォーミングアップを入念に。首まわりや肩胛骨まわりをゆっくりとほぐします。重心を整え、深い呼吸をしたあとはのどの奥を開くストレッチをしました。
「のどの奥を引き上げて、卵1個が入っているイメージです」
日常生活ではやらないこういうワークは、参加者の身体に新鮮な刺激を与えていることでしょう。

今日の課題曲は季節の唱歌『朧月夜』『茶摘』、そしてペギー葉山さんを偲んで『学生時代』でした。今日はなぜだかいつにも増して声が伸び伸びと出ていたようで、後藤さんも田村さんも「どうしたんですか今日は!?」と驚いていました。事前のおしゃべりが発声練習になっていたのかもしれませんね。
『茶摘』ではほとんどの方が幼い頃に手遊びをしたことを思い出し「わー懐かしいねえ」「よくやったよねえ」と頷きあっていました。本日唯一の男性は「私は男なんでそういうのはやってないですけどね…」と言いながらも、リズムに乗って溌剌と歌っていました。
『学生時代』の歌声がこれまた素晴らしく、後藤さんが「きっとペギーさんも“みなさんお上手ね”と言っていると思います」とモノマネを交えて言ったので、みなさん大笑いになりました。
ひとしきり歌って一服しながらのミニコンサートでは『波浮の港』『すみれの花咲く頃』が披露されました。演奏家のお二人は『波浮の港』を演奏するのは初めてとのこと、参加者からのリクエストにお応えしてのお披露目となりました。この会が参加者のみならず、演奏家にとっても新しい歌と出逢う機会になっているんですね。後藤さんは「素敵な歌と出逢わせていただいてありがとうございました」と感謝していました。
『すみれの~』はスウィング感たっぷりに、みなさん体を揺らしながら手拍子で演奏を応援します。外はいまにも降り出しそうな曇り空でしたが、浪漫あふれる歌が気持ちを明るくしてくれました。
アンコールは母の日にちなんで『おふくろさん』でした。「え、演歌も歌うの!?」と驚いていた人もいましたが、後藤さんも田村さんもジャンルを超えて素敵な歌を毎回演奏してくださいます。
母への思慕をこめた熱唱にいつしか涙を誘われてハンカチで目元を押さえる方が何人もいました。何歳になってもお母さんの存在は大きいものですよね。

終演後は恒例のみんなでお茶っこ会です。いつも美味しいものを用意してくださるエプロン隊のおばさま方、今日のメニュウは手づくりのコーヒーゼリーときゅうりの辛子漬けでした。ごちそうさまです。 お茶を飲みながらおしゃべりして、演奏家はさりげなく参加者の音楽の好みやリクエストを聞き出していました。今後のプログラムにさっそく反映しようというわけです。
「民謡もいいですね」「盆踊りに備えて踊りも入れましょうか?」「浴衣姿で…」などなど、どんどんアイディアが飛び出してきます。参加者と演奏家がともにつくるうたっこ会です。これからも一緒に育てていきましょう!