お知らせ

みやぎの「花は咲く」合唱団_6月

2017.6.9

仙台市「音楽の力による震災復興支援事業」
≪みやぎの「花は咲く」合唱団≫
おもに宮城野区の仮設住宅、復興公営住宅、防災集団移転地区、
または津波被災地域にお住まいのおおむね60歳以上の方々と、
毎月1回合唱の練習をしています。

青い空に白い雲、照りつける太陽。梅雨入り前に夏の予行練習みたいな日です。さあ今日も元気に歌っていきましょう!
いつものように講師はソプラノ齋藤翠さん、ピアノは目々澤亜紀さんです。
恒例の発声練習の前に「滑舌をよくするウォーミングアップとして早口言葉をやってみましょう」と翠さんから新たな提案がありました。速く、クリアに、しかもみんなと揃えて言うのが目標です。座席の列ごとに分かれて競争しました。
ゴーイングマイウェイでばらばらなチームもあれば、ピシッと揃って「おお、すご~い」と他チームから拍手されるチームもあり、みなさん夢中でトライしていました。いっぱい笑って横隔膜もほどよくほぐれたことでしょう。

今日は『あの素晴らしい愛をもう一度』をじっくり練習しました。
最初にみんなで歌詞を朗読し、歌の内容を確認しました。かつて燃え上がった恋心を懐かしむ様子がせつない歌ですね。
翠さんが「みなさんは…こんな経験したことありますか?」が質問すると男声メンバーから「50年前ね!」との返事があり、わっと笑い声が沸きました。それに返して翠さんが「私は『芸の肥やしにするぞ!』と思って乗り越えました」と言うと「さっすがプロだね~」との声が上がりました。
パートに分かれての練習のときは、前回欠席したアルトメンバーから「もうついて行けないんじゃないかと心配で…」と弱音が聞こえて来ました。しかし、前回参加した人たちもけっこう忘れてますからそんなことは問題ではないのです!
各パートとも丁寧に音取りし、紛らわしいところには楽譜に注意点を書き込みつつ、少しずつ進みました。特に流行歌は意外と自分の好き勝手に覚えていたりして歌詞や音程がちがっていることがあるのでむしろ要注意なのです。
「さあ、できなくてもいいので、思い切ってハモってみましょう!」と、二組に分かれて歌うことにしました。躊躇してざわめくメンバーに「難しいかもしれませんが、自分たちの出来を確認することは大事ですし、目標はちょっと高めぐらいが楽しいですよね」と翠さん。
その笑顔に押し切られた感はありますが、歌ってみると意外にそれなりの良い感じに聞こえました。さっき不安を訴えていたメンバーも「お、いいねえ!」と嬉しそうです。翠さんも「あっちゃこっちゃいろいろありますけど、でも悪くないですよ!」と褒め、みなさんまんざらでもない様子でした。

ところで、この春から南三陸へ戻ったメンバーSさんが今日も遠いところを参加してくださいました。引っ越ししたばかりなので様子を訊ねると、「♪こころ~とこ~ころが~今はもうかよわ、な、い…」と、いま練習したばかりの歌の一節を歌って「6年も離れてたからね…なかなかね」とさみしげに小さく笑いました。
故郷に戻れたからそれで万々歳ということは決してなく、そこはもうかつての故郷ではすでにないのです。6年間ばらばらになっていた人たちが集まって〈新しい故郷〉を創ってゆかなければならないのです。おそらく一筋縄でいくことではないでしょう。
「月に一度ここでみんなと歌って、元気を充電して行ってくださいね!」と言うと、Sさんは「うん、そうだね~」と笑顔を見せました。この場が、Sさんをはじめメンバーみなさんにとって元気の素になってるといいなあとつくづく思う初夏の朝でした。