お知らせ
卸町「出前だよ!全員集合!うたごえ広場♪」
- 2017.6.18
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少しどんよりとした曇り空の日曜日。今年1月に木管五重奏で復興コンサートを開催した、卸町コミュニティプラザほるせに伺いました。(左の写真は同じ場所ですが、1月にお伺いした際のものです!)ここは3階より上の階が災害公営住宅となっています。町内会は、昨年の12月にできたばかり。石巻や、岩手県大槌町から入居された方もいらっしゃいます。復興コンサートの開催後、よかったら歌声サロンも、やってみませんか?とお話しすると「ぜひに!」というお返事をいただき、まずはお試しに1回、開催してみよう、となりました。
事前に申込みをいただいた方は、わずかだったものの、蓋を開けてみると、民生委員さんや、ここに住むおばあちゃんのお家に遊びに来ていた可愛い姉妹も、一緒に参加してくれました。音楽リーダーをお願いしたのは、メゾソプラノの後藤優子さんと、ピアノの田村聡子さん。どんな年代の方が集まってくださるのか、わからないなかでの選曲は難しかったと思うのですが、この季節らしい曲を選んでくださいました。
広い通りに面した大きなガラス窓から、街路樹の緑が見えてとても気持ちのよい会場です。少し緊張の面持ちで始まった「うたごえ広場」。まずはストレッチから…「首をゆっくり2周、回してみましょう」「手を組んで、天井に伸びます!5秒そのままにしたら、脱力~」「次は、白鳥のように翼を広げるイメージで…」決して難しいことをしているわけではないのに、少し動いただけで身体がぽかぽかとしてきました。かわいい姉妹も、一緒に大きく背伸び!表情筋をほぐす運動の「びっくりした顔!」「細いストローで一気にジュースを吸いましょう!」初めてのことに、みなさん戸惑いながらも、挑戦です。「美顔効果もありますよ!」のひと声に、そちらこちらから笑い声が零れます。発声練習にも挑戦。大人になってから合唱なんて、もしかして初めての方もいたかもしれませんね。
今日のうたは「茶摘み」「夏の思い出」「上を向いて歩こう」。まず「茶摘み」の1番を後藤さんが独唱で歌ってくださると、少し飽きて遊んでいた、姉妹の妹さんが、後藤さんの美しい歌声に驚いたように、ぱっと前を向き、お姉ちゃんの傍に走ってきました。そのまま、じっと後藤さんを見つめ、歌に聴き入っている様子は、小さいながらに何かを全身で感じてくれていることが、とても伝わってきました。
その後、みんなで歌詞を朗読。「茶摘み」の歌詞を、小学2年生の女の子も一緒に読んでいます。「この曲、知ってる?」と後藤さん。「にほんごであそぼ、で少しやってた!」なるほど!今の子供たちの方が、私たちよりむしろ唱歌を知っているのかも、しれません。歌ってみると、やはり大人のみなさんも曲をご存知の方ばかり。とはいえ、後藤さんから…「みなさん、歌詞を手元に持っていると、どうしても下を向いて、猫背になってしまうのですが、その歌詞カードを上に上げましょうか。」そして今一度「茶摘み」を歌ってみると…みなさんの声が、ぐんと聴こえてくるようになりました。
「夏の思い出」は、後藤さんが「ご存知の方?」と尋ねると、やはりあちらこちらから手が上がります。「上を向いて歩こう」も、男性の声がたのもしく、音に厚みが増します。そして、みなさんすっかり後藤さん・田村さんコンビの、楽しい指導と素敵な音楽に、心がほぐされたのでしょう。「上を向いて歩こう」の頃には、どの方も、右に左にと自然に体でリズムを取って、リラックスされているのがわかりました。「間違っても構いませんから、大きな声で歌ってみましょうね」後藤さんのやさしい一言、田村さんの誘い出すような伴奏に、みなさんも乗ってきましたよ。終わる頃には、「合唱団が作れますね!」と後藤さんに言っていただけるほど、大きな歌声が広がっていました。
楽しい時間はあっという間、一度、小休憩を取りました。その時に、最前列にいらした女性が、後藤さんと田村さんの元へ。「元々歌は聴くのも、歌うのも、とっても好きだったのだけど、震災の後、前のようには声が出なくなって、息も、深く吸えないようになって…。声を出そうと思っても、なんだか擦れたようなってしまって…。でも、今日、自分が、こんなにまた大きな声で歌えるなんて、自分でもびっくり!」後藤さんの手を握りながら話してくださる、その方の感激が伝わってきて、後藤さんの目にも涙がにじみました。「声は、心と体とに、直結していますものね…でも、さっきとってもいい声で歌ってくださっていて、こちらにもちゃんと聴こえていましたよ!」その後藤さんの一言に、またその方も笑顔になってくださいました。今日は、また、歌が歌えるようになった記念日ですね、と、紙コップのお茶で、乾杯!
小休憩を挟んで、最後はミニコンサートの時間。音楽リーダーのお二人の演奏に、耳を傾けます。「みなさんに今日ここで、出会えたことに感謝して、この歌を選びました」と演奏されたのは「アメイジング・グレイス」。日本語と英語とで続けて歌ってくださった後藤さん。初めてお会いするみなさんへ、本当に心のこもった、深く、しっとりとした歌を聴かせてくださり、拍手喝采。
最後の曲はミュージカル「マイフェアレディ」から「ひと晩中踊れたら」。楽しい楽しいミュージカルソングには、みなさんにも手拍子で参加していただきました。劇場の舞台から飛び出してきたような、明るい後藤さんの歌声、そして最後の迫力あるハイトーンには、みなさん心底驚いていらした様子!
これで最後…の予定でしたが、アンコールの拍手に応えて、タイトルを言わずに演奏されたのは和田アキ子さんの「あの鐘を鳴らすのはあなた」。じっくりと、そして大きな舞台で歌われているかのように感じさせる後藤さんの歌唱力にみなさん圧倒されつつ、「最後はご一緒に!」の掛け声に、朗々と歌い出される方もいて、なんとも華やかで贅沢なうたごえ広場が終わりました。
あっという間の1時間、終わる頃にはみなさん、本当に笑顔!たくさん歌って、身体も心もあたたまったのではないでしょうか。そして、みなさん声を揃えて「また、ぜひやってほしい!」「毎日来てくれてもいいよ!」などという声も。後藤さんも、田村さんも、そして町内会で担当してくれたFさんにも、私たちにとっても、本当に嬉しいことでした。毎日、というのは少し難しくはありますが…ぜひまた、季節ごとに1度くらいのペースで、お伺いすることを約束してきました。みなさん、またお会いしましょう!!