お知らせ

メモリアルコンサート_7月

2017.7.11

音楽の力による復興センター・東北では今年度、
奇数月11日に「メモリアルコンサート」を企画制作しています。
東日本大震災の月命日にあたる日、市民のみなさんとともに、
音楽を通じてあの日に思いを馳せる場を設けたいと考えました。
(主催=仙台市)

日差しの強さを肌で感じる夏日となりました。本日のメモリアルコンサートはメゾソプラノ後藤優子さんとピアノ田村聡子さんのお二人にご登場いただきました。

会場には演奏家のファンと思しき人やメモリアルコンサートの常連さんが早くから駆けつけ、およそ70名の参加者がありました。演奏家の中学校の恩師も駆けつけたそうで、さらには毎月「歌声サロン」をお届けしている泉区の復興公営住宅の方の姿も見えました。遠いところを地下鉄を乗り継いで来てくださったことに感激するスタッフなのでした。ありがとうございます。

さて、コンサートはNHKドラマ主題歌としておなじみの『スタンド・アローン』で始まりました。後藤さんの、朗々としながら落ち着いた印象の歌声が会場を包み込み、お客さんは一気に惹き付けられていたように見えました。
続く『アメイジング・グレース』ではタイトルを聞いた瞬間に「ああ!」と客席で小さな歓声を上げる方がいました。好きな曲が目の前で演奏されるのは一段と嬉しいものですよね。
目を閉じてしみじみと聴き入る方があちこちにいらっしゃいました。

プログラムの中盤では懐かしの日本の唱歌を一緒に歌っていただきました。季節にちなんで『たなばたさま』『我は海の子』『浜辺の歌』の3曲です。
後藤さんの指揮に合わせてお客さんが歌い始めると、思いのほかたっぷりとした豊かな歌声が湧き上がり、演奏家のお二人も圧倒されそうになっていました。 
男性のお客さんも積極的に参加してくださったので、なおのこと力強い元気な歌になっています。女声の高音もよく響いていて、もしかすると歌の経験者が多くいらしたのかしらと思われました。毎回思いますが、本当に佳い光景です。見ず知らずの人たちをも一瞬にして繋いでしまうのが歌の力なのでしょう。
合唱の後は田村さんのピアノ独奏でモーツァルト『トルコ行進曲』が披露されました。軽快かつ素早い指運びに「ブラボー!」と声が上がりました。
プログラム後半もクラシック、ジブリ映画主題歌、洋楽ポップスなど幅広いジャンルからの選曲で進行しました。
中でも喜納昌吉『花』では、客席で涙をこぼす人が多くいました。後藤さんと田村さんの二人の声のハーモニーがやさしくお客さんを包んで、寄り添うような温かさを醸し出しています。悲しみも喜びもすべて受け止めて肯定してくれる懐の大きな歌に聴く人びとの心が揺さぶられているようでした。

アンコールでお二人は『千の風になって』を演奏しました。この歌詞の直截さがつらくて敬遠したい感じがながらくあった歌です。が、あれから6年が経ち、七回忌を済ませると「あなたの大切な人はいつもそばで見守っているよ」というこの歌が、
多くの方にとって「そうあってほしい」と自分の気持ちを代弁した親しいものとして受け止められるようになったように思います。大自然の中で先祖が見守っているという感覚は東北の人びとにはとてもしっくりくるものです。日常のさまざまな局面で孤立化が加速する昨今ですが、人びとが他者とつながっている感覚を取り戻すために何ができるだろうか、とこの歌を聴きながら思いました。
大喝采の中でコンサートは終了となりました。
お見送りする演奏家に話しかけるお客さんたちも満面の笑顔を見せて高揚しています。佳い時間を過ごしていただけた様子が遠くからでも窺えました。みなさん今日もありがとうございました。