お知らせ

石巻・みなと荘「みんなと音楽会」へ

2017.8.2

石巻市総合福祉会館みなと荘はかつて旧北上川にほど近い湊地区にあり、東日本大震災の津波で浸水、その後数年は2階部分だけで活動していました。2015年春に移転新築し、現在は子供から高齢者までが行きかう地域活動の拠点の一つとなっています。
普段は学童保育も行なっていることから、今回は「夏休み中の児童と地域のお年寄りが一緒に楽しめる音楽会を」との依頼がありました。
会場の集会室は広々とした和室で、老若男女およそ70人が集まりました。出演はソプラノ齋藤翠さん(仙台オペラ協会)、ヴァイオリン長谷川康さん(仙台フィル)、フルート芦澤暁男さん(仙台フィル)、ピアノ高塚美奈子さんの4名です。

演奏家たちが『さんぽ』を演奏しながらつぎつぎ登場すると、子供たちが「わぁ!」と目を丸くし、大人も手拍子で歓迎します。楽隊は「いったい何が起こるんだろう?」と気分をわくわくさせてくれるものですね。
プログラムは古今の日本の音楽を中心に構成されました。大河ドラマ『真田丸』テーマ曲では、長谷川さんのビシバシとしたヴァイオリン演奏のそばで、芦澤さんが渋く尺八を吹きました。いわく「フルートと似ているから簡単かと思ったけど、尺八はすごく難しいですねえ」だそうです。
お二人がそれぞれ楽器の仕組みを説明すると、子供たちは好奇心旺盛で「見たい見たい」と食いつき、大人も「へぇぇ」と興味津々でした。芦澤さんが十八番の栄養ドリンク瓶での演奏を披露すると、老若男女に大ウケでした。
『幸せなら手をたたこう』では子供たちから「この歌知らなーい」と声が上がりましたが、翠さんのリードでみなさん手や肩をたたいたりVサインをしたりと、子供から大人までが無邪気に楽しんでいました。こういうときは恥ずかしがらないで一緒にやってみるのが楽しむコツです。
プログラム中盤で地元の2つの小学校の校歌を歌いました。湊小学校と湊第二小学校の校歌です。これはみなと荘センター長の蟻坂さんからの提案です。両校とも津波に襲われ、特に第二小は被害が大きく閉校を余儀なくされました。現在は湊小に統合されているそうです。
元気いっぱいに体じゅうを声にして歌う子供たち、姿勢を正して歌うおじいさん、リズムに体を弾ませて歌うおばさま方などの姿が見え、傍で見ていて胸が熱くなる光景でした。校歌は世代を超えて歌い継がれる「地域の財産」であることがよくわかりました。また、2つ並べて演奏すると歌詞にもメロディにもそれぞれの味わいがあり、一口に校歌と言えど奥深いものだと思いました。
高塚さんは『仔犬のワルツ』をソロ演奏しました。「うちもイヌ飼ってるー!」「くるくる回ってシッポ追いかけるよ!」と子供たちはすっかりうちとけた様子です。演奏が終わった瞬間にはおとな席から「ほぅ…」と小さなため息が聞こえ、喝采が沸きました。
最後はジブリ映画「天空の城ラピュタ」主題歌の『君をのせて』が演奏されました。子供たちの大合唱に包まれて、演奏家も嬉しそうでした。後ろで見守る大人たちも目を細めて楽しそうに聞いていました。
アンコールは『ラデツキー行進曲』です。翠さんのリードでお客さんは手拍子で参加します。
長谷川さんと芦澤さんはお客さんの間を行ったり来たりして、文字通りの目の前で演奏しました。お二人ともサービス精神ゆたかなので、あちこちから笑い声が上がりました。
お祭りみたいな賑やかさの中でコンサートは終演となりました。コンサートの後にはセンター長のはからいでみなさんにかき氷がふるまわれました。演奏家もお客さんと歓談しながら「おいしい!」「おかわりいいですか」と夏の味を堪能していました。
みなと荘での復興コンサートは4回目となります。訪れるたびに周辺地域の風景が変わっていて、また人びとの様子もだんだん明るくなってきているように感じました。子供たちの明るい真っ直ぐな歌声に私たちも元気をいただいた夏の日でした。