お知らせ

ほっとサロン てとて「真夏の涼やかコンサート」

2017.8.9

福島市社会福祉協議会では月に2回、ほっとサロン「てとて」を開催しています。福島県の沿岸部(相双地区)から、原発事故のために、福島市内へ避難・移住されている方たちが集うサロンです。2016年の夏から、「音楽がお好きな方が多いので、またお願いできたら」とお声掛けいただき、今回が3回目となりました。出演は、福島県喜多方市ご出身のヴァイオリン奏者 松山古流さんを含む、カルテット・フィデスのみなさんです。他メンバーは、ヴァイオリン熊谷洋子さん、ヴィオラ御供和江さん、チェロ石井忠彦さん。全員が仙台フィルメンバーの、弦楽四重奏です。会場は、福島市音楽堂小ホールを借りてくださいました。

今年の3月31日に、避難指示が解除された町・地域もあり、元住んでいた町に戻られた方もいて、サロンへの参加者数は少しずつ減っていっているそうです。とはいえ「コンサートには行くからね」と、戻られた町や村から駆けつけてくださった方もいらっしゃいました。宮城・岩手とは、また全く違うみなさんのご事情。月に一度二度、ここでお友達に再会される時間は、きっととてもとても楽しみな時間なのではないでしょうか。

今回は、クラシックの名曲から、みなさんに一緒に歌っていただけるような唱歌や歌謡曲、そしてタンゴまで、幅広くプログラムをご準備いただきました。コンサート、ということで少し緊張の面持ちだったみなさんも、ヴィオラの御供さんのノリの良い司会で、あっという間に笑顔。その後も、客席から笑いの絶えない楽しい時間となりました。

今回、みなさんには「夏に聴きたいクラシック」「夏に思い出すクラシック」をご紹介ください、とお願いしていました。普段はあまりお話しにならない男性陣の素敵なお声も、みなさんにお聞きいただけたらと思い…。チェロの石井忠彦さんはヴィヴァルディ「四季」より「夏」を紹介くださいました。なんでも、初めて自分で買ったレコードが「四季」。中でも夏の嵐の様子を描写したような、この「夏」に惹かれたのだそうです。お話しの前に演奏された「夏」。楽譜に記されたソネットと言われる短い詩も、御供さんが朗読して紹介くださいました。

ヴァイオリンの松山古流さんは、ボッケリーニの「メヌエット」。仙台フィルに入団した後、釣りをしに女川に通うようになったそうです。釣りをしていると近くの工場から、正午を知らせる時報代わりに聞こえてきたのがこの曲。そして、なんだか聞いたことのある音色だな、歌い方だなと思っていると、それは古流さんの先生が録音したレコードだったのだそうです!風に乗って聞こえてきた音色からも、先生の音色だと分かってしまうなんて…流石です。お話の後で「こんな曲です」と古流さんが弾いてくださった一節も、とても素敵でした。

ヴァイオリン熊谷洋子さんは、松島水族館のお話しから。なんだろう?と思っていると…サン=サーンスの「動物の謝肉祭」の中の1曲「水族館」を、夏には思い出されるのだそうです。なるほど、始まりから終わりまでずっと涼し気で、プールの中に浮かんでいるような、水の中に気持ちよくたたずんでいるような…。熊谷さんのお話しが、またとても素敵でした。こんなお話しも、音楽との新たな出会いに繋がっていくのかもしれませんね。

残念ながら、御供さんのお気に入り曲は、時間切れとなってしまいました!また、お伺いしなくてはいけませんね…。その代わりに、みなさんに歌っていただく曲がたっぷり3曲。「浜辺の歌」ではまだまだ遠慮されていたのかも?しれませんが、「北国の春」「川の流れのように」は、たくさんの方の歌声が聴こえてきました。中には、涙ぐまれていた方もいらっしゃったようで…。

最後は「ラ・クンパルシータ」で本編を締めると、盛大な拍手にお応えして2曲のアンコール。「ウナ・ポル・カベーサ」そして「星に願いを」でお開きとなりました。楽しいおしゃべりも、心地よい演奏も、まだまだ時間が足りなかったのは、お客さんも演奏者のみなさんも同じ…お名残惜しいお別れとなりました。

舞台に皆さんにも上がっていただいた記念写真、並びながらも、撮り終わった後も、フィデスのみなさんに「とっても良かったよ」「感動しちゃった!」と声を掛けてくださるみなさん。こうして、直接に、身近にお互いお話しいただけることも、復興コンサートならでは、です。みなさん、きっとまた伺います。どうぞお元気で!