お知らせ

支倉サロン「冬のほっこりコンサート」2017

2017.12.15

浄土真宗本願寺派東北教区災害ボランティアセンターは2011年3月以来、全国からやって来るのべ数万人のボランティアを受け入れながら、東日本大震災の被災者を支援するさまざまな活動を続けてきました。現在も継続している活動の一つに、毎月開催される「支倉サロン」があります(このセンターの所在地の支倉町にちなんだ名称です)。かつて仙台市内のみなし仮設にお住まいだった人びとの交流の場になっています。
折りにふれて私たちがここに復興コンサートをお届けするようになって3年以上になります。常連さんが演奏家やスタッフの顔をおぼえて「毎年ありがとうございます」「今日も楽しみに来ました」と声を掛けてくださいます。みなさんお元気な様子で何よりでした。
今日の出演は仙台フィルメンバー(ヴァイオリン小池まどかさんと伊部祥子さん、ヴィオラ清水暁子さん、チェロ八島珠子さん)による弦楽四重奏です。
エルガー『愛の挨拶』にはじまり、前半ではハイドン『ひばり』やモーツァルト『ディヴェルティメント』など、弦楽四重奏ならではの佳さをたっぷりと味わっていただきました。女性だけの編成だからでしょうか、柔らかで軽やかな空気がふうわりと漂います。可愛らしいひばりのさえずりが明るい光を連れてくるようで、冬至が近いこの時季にちょっとほっとする感じがしました。

続いてはアンダーソン『そりすべり』です。参加者の皆さんには鞭の音を拍手で入れていただきました。復興センタースタッフが手にした「パチン!」と鋭い音を出す道具を見て「あ、去年もそれ使いましたよね?」「たしかどなたかの旦那さんがお手製とか…」と言う方がいました。その通りです!よく覚えていらっしゃいますねえ、すばらしい。おっしゃるとおり、チェロの八島さんの旦那さんが昨年こしらえた物です。
ここで、ちょっとしたお楽しみの趣向としておなじみ『ハッピーバースデー』の変奏曲が紹介されました。「ハイドンふう」「ドヴォルザークふう」「ハンガリーふう」のほか、ジャズ、ワルツ、ポルカ、タンゴなどなど、いろいろな表情のハッピーバースデーが次から次へと登場しました。ちょうど12月生まれの方も何人かいらして、お菓子の詰め合わせのような楽しいアレンジに嬉しそうにしていました。

プログラム後半は懐かしの映画音楽特集で、『エデンの東』『白い恋人たち』などが演奏されました。みなさんの青春の思い出がつまった映画かもしれませんね、それまでの聴き方とはまたちがう集中のしかたで、すうっと体全体を音楽にゆだねるような感じで聴き入っていました。特に男性は目を閉じて聴く方が多かったようです。その瞼のスクリーンにはどんな映像が浮かんでいたのでしょうか。『ニューシネマパラダイス』の哀愁を帯びたメロディの、最後の一音がそうっと消えゆこうとするさまをみなさんは息をひそめてじっと聴いていました。余韻を味わう数秒の沈黙ののちに、ふわぁっと深いため息と喝采が同時に湧きました。
最後はがらりと雰囲気を換えて、なんと『ソーラン節』が披露されました。みなさんは手拍子と「はあ、どっこいしょ~、どっこいしょ!」と掛け声を入れてくださって、にぎにぎしく元気よく。アンコールでは『上を向いて歩こう』をご一緒に歌って、朗らかに今年を締めました。
終演後のお茶会には演奏家も参加してみなさんとおしゃべりを楽しみました。このサロンの担当者から伺った話では、仙台市内のみなし仮設を出た後に遠い沿岸部の故郷へ戻った人、津波に流された家族の行方がいまだにわからない人、6年以上が経過した今になってようやく気持ちが前向きになり人と交流する意欲が湧いて来た人がいらっしゃるとのことでした。

 

「また来てくださいね」の声に「はい、また来ます!」と演奏家は答えました。
こんな小さな約束が時として人を勇気づけることがあります。きっとまた会いましょうね。